国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和8年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
和田 優斗
(筑波大学)
会議名
The 2026 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI 2026)
期日
2026年4月13日~17日
開催地
Centre de Convencions Internacional de Barcelona, Barcelona, Spain

1. 国際会議の概要

The CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI)は、Association for Computing Machinery(ACM)のSIGCHIによって1985年以降毎年開催されている、ヒューマンコンピュータインタラクション分野に関連する世界最大の国際会議です。今年のCHI 2026は2026年4月13日から4月17日まで、スペイン・バルセロナにあるバルセロナ国際会議場にて開催されました。

本会議には、5,254人が現地参加しました。また、2万人以上の著者が論文投稿を行い、1,702件のPapers、789件のPosters、67件のInteractive Demosが採択されました。期間中には、研究発表以外にもWorkshops、Panels等の様々なプログラムが開催されました。本会議の予稿集は、ACMからオープンアクセスとして出版され、ACM Digital Libraryを通じて閲覧することが可能です。

来年のCHI 2027は、2027年5月10日から5月14日まで、アメリカのピッツバーグにて開催されます。


オープニングセッション

ポスター会場の様子

2. 研究テーマと討論内容

4月13日のポスターセッションにて、「Exploring Indirect Touch Gestures for Smartphone Interaction within VR Environments」の題目にて発表を行いました。

本研究では、仮想現実(VR)環境におけるスマートフォン操作のための、間接タッチを用いたジェスチャセットを開発しました。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着したVR体験中にスマートフォンを操作できると、既存のスマートフォンアプリケーションが使用可能となるため便利です。このために、先行研究やApple Vision Pro等の商用システムでは、VR空間内にスマートフォンの画面をミラーリングする技術が開発されています。しかしながら、空中に表示されたスマートフォン画面に直接タッチする場合、腕を持ち上げることに伴う疲弊が問題になります。


ポスターセッションでの発表

これに対して、本研究では「間接タッチ」という手元を視認せずに行うタッチを用いて、一般的なスマートフォンとのインタラクションを実現するためのジェスチャセットを開発しました。本ジェスチャセットは、タップ、ダブルタップ、ロングプレス、ドラッグ、スクロールという5種類の操作に対応します。これらの操作を判別するために、我々は実験を通じて指の軌跡データを計測して、各操作の判別に有用なパラメータを探索しました。これにより、ロングプレスとドラッグの判別に適した押下時間の閾値を明らかにしました。さらに、似た軌跡の特徴を持つタップとスクロールを、機械学習を用いて判別するモデルを構築しました。モデルを評価した結果、97.8%という非常に高い精度で両操作を判別できることを確認しました。

開発したジェスチャセットを通じて、ユーザは手元に持ったスマートフォンを視認せずにタッチして、VR空間内にミラーされたスマートフォンの画面に対して操作を行えるようになります。したがって、VR環境でスマートフォンを利用する際に、身体的負荷を抑えながらVR体験の没入感を保った状態でスマートフォンを操作することが可能となります。

発表時には、ジェスチャセットの設計に関する妥当性や、スマートフォン操作以外へのジェスチャセットの応用、実利用に向けたユースケース等に関して、他の参加者と議論を行いました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


バルセロナ市街地の様子

発表を通じて、多くの方々から質疑やコメントをいただくことができました。事前に想定質問を準備していたことや、デモ動画を活用して発表に臨んだことにより、研究の意義や成果を効果的に伝えることができたと感じています。一方、英語での質疑応答には苦労する部分も多かったため、より円滑なコミュニケーションを行えるように、英語の勉強に一層努める必要があることを実感しました。今回行った議論を参考にして、認識システムの改良や実験計画の見直しを行い、より実用的な研究として発展できるように改善を重ねていきます。

また、発表外でも参加者との交流を行うことができました。学会のコーヒーブレークではジュースや軽食が振る舞われたほか、4月14日には、CHI2026 Japan Lunchという日本からの参加者を対象とした懇親会が開催され、食事を楽しみながら様々な学生や研究者と交流を楽しむことができました。

私は過去にも国際会議に参加したことがありましたが、CHIは特に参加人数が多く、ときには会場が満員で溢れるほどにどのセッションも活気に満ちていたことが印象的でした。ポスター会場でも、参加者が研究内容について熱心に議論を行っており、HCI分野全体の研究の広がりと勢いを肌で感じることができました。今回の参加は、自身の研究成果を発信するだけでなく、最先端の研究に触れ、今後の研究への意欲を高める大変貴重な機会となりました。

最後に、本国際会議への参加に対してご支援を賜りました丸文財団の皆様に、心より感謝申し上げます。

令和8年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ