
2026 年5月4日から8日にかけて、スペイン・バルセロナで開催された「IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing(ICASSP)」に参加させていただきました。
ICASSPは、信号処理分野において世界最大級の国際会議です。今年は、音声・音響、画像・映像処理、機械学習、通信、センシング、医用応用など、幅広い分野から10,000件を超える論文が投稿されました。会場では、口頭発表やポスター発表に加え、チュートリアルやワークショップなども行われ、世界各国から数千人の研究者が集う、非常に活気のある会議となりました。
講演やワークショップでは、各研究分野の歴史的な背景から最先端の研究動向まで幅広く解説されました。自身の専門分野だけでなく、普段触れる機会の少ない分野についても興味深い知見を得ることができ、大変有意義な経験となりました。
私は、「Efficient Few-Shot Learning for Edge AI via Knowledge Distillation on MobileViT」というタイトルで、5月5日にポスター発表を行いました。
本研究は、ネットワークの末端に位置するエッジデバイス上で、高精度な推論を可能にするエッジAIの実現を目的としたものです。提案手法では、少量のデータから新たな対象を認識するFew-shot学習と、大規模なAIモデルの知識を小型モデルへ継承する知識蒸留を組み合わせ、軽量かつ高精度な画像認識モデルの構築を目指しました。
具体的には、従来広く用いられてきたResNet 系モデルに代えて、軽量でありながら高い表現能力を持つMobileViTを採用し、その事前学習に知識蒸留を適用しました。評価実験では、1枚の学習サンプルのみを用いる設定において、従来手法と比較して認識精度を最大約14%向上させました。また、Jetson Orin Nanoを用いた実機評価では、消費電力を約37%削減するとともに、2.6ミリ秒での高速な推論処理を実現し、エッジAI への適用可能性を示しました。
ポスター発表では、Few-shot学習や知識蒸留を専門とする研究者だけでなく、異なる分野の参加者とも議論する機会を得ました。限られた時間の中で、研究背景、提案手法、実験結果を分かりやすく伝えることの難しさを感じる一方、質問や意見を通して、実機評価の条件や他のデータセットへの展開など、今後検討すべき課題を再認識しました。また、海外の研究者に英語で研究内容を説明し、意見交換を行った経験は、自身の研究を客観的に見直す貴重な機会となりました。


今回のICASSP 2026におけるポスター発表では、エッジAIや機械学習の観点から、提案手法に関するさまざまな質問や意見をいただきました。それらに回答する過程で、自身の知識や研究内容を改めて整理するとともに、新たな視点や知見を得ることができました。また、他の参加者によるポスター発表を聴講し、関連分野における最新の研究動向や多様な研究手法に触れたことで、今後の研究方針を見直し、より具体的に定めるための有意義な機会となりました。
英語を用いたコミュニケーションについては、必ずしも円滑に進められたとは言えませんでしたが、事前に十分な準備を行ったことで、自身の研究内容を相手に伝えることができました。質疑応答においても、専門用語や複雑な内容を可能な限りかみ砕き、相手の理解度を確認しながら説明することを心掛けました。この経験を通して、英語で専門的な内容を即座に説明することの難しさを改めて認識した一方で、国内外の研究者と研究について議論し、交流することの楽しさも実感しました。
今後の研究活動や対外発表に向けて、研究内容を簡潔かつ正確に伝える力を磨くとともに、英語によるコミュニケーション能力のさらなる向上に努めてまいります。
最後に、本国際会議への参加に際し、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に、心より感謝申し上げます。
