「2026 MRS Spring Meeting & Exhibit」は、Materials Research Society(MRS)が主催する、毎年春と秋の年2回開催される世界最大級の材料研究に関する国際科学会議である。本年の春会議は、2026年4月26日(日)から5月1日(金)にかけて、米国ハワイ州ホノルル市内の Hilton Hawaiian Village(Tapa Conference Center、主会場)、Ala Moana Hotel、Prince Waikiki、Sheraton Waikiki Beach Resort の4会場に分散して開催された。
本会議は、Broader Impact(BI)、Characterization(CH)、Electronics, Optics and Photonics(EL)、Energy and Sustainability(EN)、Manufacturing(MF)、Materials Theory, Computation and Data Science(MT)、Nanomaterials(NM)、Quantum Materials, Interfaces and Topological Systems(QT)、Soft Materials and Biomaterials(SB)、Structural and Functional Materials(SF)の10のシンポジウムクラスタから構成され、世界各国から数千名規模の研究者・大学院生・企業エンジニアが参加した。各シンポジウム内では口頭発表とポスター発表の双方が密に進行し、材料科学の最先端の研究成果について活発な議論が交わされた。
私は Soft Materials and Biomaterials(SB)クラスタに属するシンポジウムにおいて、Sheraton Waikiki Beach Resortを会場として、ウェアラブルセンサに関するポスター発表を行った。

発表題目: 「A Near-Miss Slip Sensor in Footwear for Detecting Latent Slip Risk During Gait」(発表番号 SB03.02.10、ポスター発表)
柔らかい弾性材料が有するソフト変形を利用して、これまで3軸力センサが必須だった滑り摩擦係数を1軸力センサのみで推定可能であるという提案を行い、その靴底実装とそのヒト試験での統計解析、及び動作原理の数値的実証を行ったので報告した。
本国際会議への参加を通じて、海外の研究者と直接議論する機会を多数得たことは、何ものにも代え難い貴重な経験となった。ポスターセッションでは、米国・欧州・東南アジアの大学・研究機関に所属する研究者と、合計約2時間にわたり継続的に議論を行うことができた。ポスターセッション中に3名の研究者とLinkedInのアカウントを交換し、それ以外の機会にも合計5名の名刺交換を行うことができた。
「技術の裏には常に人がいる。」
尊敬する研究者の最終講義での言葉であるが、本学会でもそれを生身で感じることができた。

また、Soft Materials & Biomaterialsを主軸として、他のセッションの発表を聴講することで、生体深部刺激デバイスやインプラントデバイス、AIを用いた測定手法の高速化など、日本では展開されていない研究テーマに触れることができ、新たな着想が芽生えた。
このような場での日本人研究者の少なさにも改めて危機感を覚えた。アジア諸国では中国人参加者が激減しているが、それでも中国人研究者の発表が際立っていた。また韓国人が非欧米系では最も多く見られており、コミュニティ形成としても極めて大きな存在感を放っていた。研究者としてアカデミックに貢献するために必要な活動は論文執筆や学会発表だけではなく、このような国際学会で存在感を持つコミュニティの形成である。それらを本国際学会で先立って行っている日本人研究者の方々にも改めて触発された。
本貴重な機会を与えてくださった一般財団法人丸文財団に、心より深く御礼申し上げる。
