国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和8年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
小野 裕太郎
(筑波大学 数理物質科学研究群)
会議名
2026 MRS Spring Meeting & Exhibit
期日
2026年4月26日~5月1日
開催地
Honolulu, Hawai‘i, USA

1. 国際会議の概要

2026 MRS Spring Meeting & Exhibit は、Materials Research Society(MRS)が主催する材料科学分野の大規模な国際会議であり、2026年4月26日から5月1日にかけてアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルで開催された。本会議では、大学、研究機関、企業、国立研究所などに所属する世界各国の研究者が集まり、材料科学の基礎からデバイス応用、プロセス技術、評価解析技術まで、幅広い研究成果について活発な議論が行われた。

会議は複数の会場に分かれて開催され、口頭発表、ポスター発表、招待講演、チュートリアル、企業展示などが並行して実施された。シンポジウムは、Characterization、Electronics, Optics and Photonics、Energy and Sustainability、Materials Theory, Computation and Data Science、Nanomaterials、Soft Materials and Biomaterials など、多様なクラスターで構成されていた。特に、半導体・有機エレクトロニクス・太陽電池・フォトニクス・エネルギー変換材料・AIを用いた材料探索など、基礎研究と応用研究を接続する発表が多く、材料研究の国際的な動向を把握するうえで有意義な機会であった。

2. 研究テーマと討論内容

私はElectronics, Optics and Photonics クラスター内の “Recent Advances in π-Conjugated Materials—From Fundamentals to Device Applications” において、インディゴ薄膜の分子配向制御に関する研究発表を行った。本シンポジウムでは、有機半導体、π共役材料、光電変換材料、分子性薄膜デバイスに関する研究が多数報告され、分子設計、薄膜形成、電子状態評価、デバイス応用を横断する議論が行われた。

私の研究では、有機半導体薄膜において重要な因子である分子配向に着目し、天然由来色素として知られるインディゴを対象として、真空蒸着時の成膜速度が薄膜構造や電子状態、デバイス特性に与える影響を検討した。従来、分子配向の制御にはテンプレート層を用いる手法が多く報告されているが、本研究では、成膜速度という単純なプロセス条件によって分子配向を制御する可能性を示した。

討論では、成膜速度によって分子配向が変化する要因、薄膜成長過程における核生成や表面拡散の寄与、さらに分子配向・膜形態・電子状態・デバイス特性の関係について質問や助言をいただいた。今後は、得られた助言を踏まえ、インディゴ薄膜における配向制御の機構とデバイス応用上の意義をより明確に整理し、論文発表につなげたい。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本国際会議への参加を通じて、自身の研究成果を国際的な場で発信するとともに、海外の研究者と直接議論する貴重な経験を得ることができた。特に、ポスター発表では、研究背景、実験手法、構造解析、デバイス応用に関して、分野の異なる研究者から多角的な質問を受けた。国内学会では、研究分野や測定手法をある程度共有した相手との議論が多いが、MRSでは材料化学、デバイス物理、薄膜成長、分光評価、計算科学など、異なる専門性を持つ研究者が同じ場に集まっている。そのため、研究の新規性を専門外の研究者にも分かる形で説明する必要があり、自身の研究をより広い文脈で位置づけ直す機会となった。

国際交流の面では、発表時間中の質疑応答に加え、シンポジウム会場やポスター会場において、海外の大学・研究機関に所属する研究者と意見交換を行うことができた。特に、英語での議論では、研究の詳細を正確に説明する力だけでなく、相手の関心を把握し、その場で説明の焦点を調整する力が重要であることを実感した。

今回のMRS Spring Meetingへの参加により、研究成果を発表するだけでなく、自身の研究の強みと課題を客観的に捉えることができた。今後は、今回得られた議論をもとに、インディゴ薄膜の成長機構と配向制御、電子状態、デバイス特性の関係をより体系的に整理し、国際誌での発表につなげたい。また、国際会議で得た視野を活かし、有機半導体薄膜の構造・電子状態・デバイス機能を統合的に理解する研究をさらに発展させていきたい。

最後に、本国際会議への参加に際し、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。

令和8年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ