The 26th Asia-Oceania Congress of Medical Physics (AOCMP 2026) は、アジア・オセアニア医学物理学連合(Asia-Oceania Federation of Organizations for Medical Physics ) が毎年開催している国際会議です。医学物理学とは、物理学や工学の知識や技術を医療に応用し、より安全で質の高い医療の実現を目指す学術分野で、放射線治療、放射線診断、核医学、放射線防護などに関する研究が行われています。
AOCMPでは、医学物理士をはじめ、医師、診療放射線技師、研究者、学生など、医学物理学や放射線医療に携わる幅広い専門家が参加し、アジア・オセアニア地域の医学物理学に関する研究成果を共有するとともに、医学物理学に関する専門的な課題について議論する場として開催されています。
今回のAOCMP 2026は、2026年9月9日から11日まで、韓国・釜山のBusan Port International Exhibition & Convention Center (BPEX) で開催されました。大会のテーマは「Beyond Precision through Intelligent Innovation for Advanced Patient Care」とされ、AIを用いた自動輪郭抽出や治療計画の自動化に関するセッションが多く設けられるなど、テーマを反映した構成となっていました。また基調講演ではAIや自動化などの新しい技術が、患者中心の医療の発展につなげることが示されていました。

私は、本会議において、「Assessment of Fragment Particle Contributions to Soft Errors in Carbon Ion Radiotherapy」の題目でポスター発表を行いました。
重粒子線治療では、炭素イオンビームと患者や治療装置との相互作用により、中性子や陽子などの二次粒子が発生します。これらの放射線が半導体デバイスに入射すると、デバイス内部で電荷が生成され、保持されている情報が一時的に変化するソフトエラーが発生する可能性があります。我々はこれまで、独自に開発した検出器を用いてソフトエラーの評価を行い、二次粒子の種類やエネルギーがソフトエラーに及ぼす影響について研究を進めてきました。
これまでの研究では、ソフトエラーの主な要因として中性子や陽子の影響を評価してきました。一方、重粒子線治療の照射野に近い条件では、重陽子やα粒子などのフラグメント粒子のフルエンスが増加することがPHITSによる計算から確認されています。そのため、このような条件ではフラグメント粒子によるソフトエラーへの影響も無視できない可能性があります。そこで本研究では、これまで十分に評価されていなかったフラグメント粒子に着目し、中性子や陽子に加えて、フラグメント粒子によるソフトエラーの断面積を評価することを目的としました。
発表では、群馬大学重粒子線医学センターで実施したソフトエラー測定実験と、PHITSを用いた二次粒子フルエンスのシミュレーション結果を組み合わせ、多変量解析によって粒子種ごとのソフトエラーへの寄与を評価した結果を報告しました。
参加者からは、中エネルギー中性子の断面積が負に振れていることについて質問を受けました。この点については、今回設定した中性子のエネルギー分割範囲が断面積の算出結果に影響している可能性があります。先行研究では、熱外中性子エネルギー領域において断面積に大きなばらつきがあることが報告されています。そのため、断面積のエネルギー依存性を考慮し、今後はエネルギー範囲をより細かく分割することや、分割範囲そのものを変更するなど、エネルギー区分の設定を変えた解析を行う必要があると回答しました。
今回のAOCMP 2026への参加は、国際会議において自身の研究成果を発信する貴重な機会となりました。ポスター発表を通じて、重粒子線治療におけるフラグメント粒子のソフトエラーへの寄与について研究成果を紹介し、海外の研究者に自身の研究内容を知ってもらう機会を得ることができました。
また、発表を通じて参加者と研究内容について意見交換を行い、中エネルギー中性子の断面積評価について、今後さらに検討すべき課題を明確にすることができました。特に、現在の解析方法ではエネルギー区分の設定が断面積の算出結果に影響する可能性があることを再認識し、断面積のエネルギー依存性をより詳細に評価する必要性を認識しました。

今回得られた知見を今後の研究に反映し、単色中性子を照射することで、特定のエネルギーにおけるソフトエラー発生への寄与を評価し、より正確な断面積の算出につなげることを検討しています。これにより、重粒子線治療場におけるソフトエラー発生特性をより詳細に評価することを目指します。
さらに、海外の研究者や学生と交流する中で、英語を用いて研究内容についてコミュニケーションを図る経験を得ることができました。一方で、専門的な研究内容を英語で正確に説明することや、相手の研究内容を十分に理解して意見交換することの難しさも実感し、今後さらに英語によるコミュニケーション能力を高める必要があると感じました。
最後に、本国際会議への参加にあたりご支援いただきました貴財団に、心より感謝申し上げます。
