国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和8年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
劉 益銘
(東北大学 ロボティクス専攻)
会議名
IEEE International Ultrasonics Symposium (IUS 2026)
期日
2026年10月4日~8日
開催地
米国ノースカロライナ州ローリー

1. 国際会議の概要


国際会議会場の正面入口

2026年10月4日から8日まで、米国ノースカロライナ州ローリーのRaleigh Convention Centerで開催されたIEEE International Ultrasonics Symposium(IEEE IUS 2026)に参加し、広帯域HAL-SAW共振子における横方向モードの抑制に関する研究成果を口頭発表した。IUSは超音波分野における主要な国際会議の一つであり、世界各国の大学、研究機関および企業から多くの研究者が参加し、最新の研究成果について発表・討論が行われる。私は高周波音響デバイスを研究していることから、弾性表面波(SAW)およびバルク弾性波(BAW)に関連する発表を中心に聴講した。特に、共振子の構造設計、不要モードの抑制、損失低減および非線形特性に注目した。本会議への参加目的は、自身の研究成果を国際的な場で発信し、専門分野の研究者との質疑応答を通じて設計の考え方を検討するとともに、関連分野の研究動向を学ぶことであった。口頭発表に加え、関連セッションの聴講、ポスター発表での議論、国内外の研究者との交流を通じて、今後の研究に生かすための知見を得た。本会議を通じて、自身の研究に対する新たな視点を得るとともに、RF音響デバイス分野における最新の研究動向を把握することができた。

2. 研究テーマと討論内容

研究テーマ: Hammer HeadとMetal Overlayを組み合わせた広帯域HAL-SAW共振子の横方向モード抑制と高Q化

発表題目: Enabling High Q and Spurious-Free Response in Ultrawideband HAL SAW Resonator Using Hammer Head with Metal Overlay

広帯域HAL-SAW共振子は、高い電気機械結合係数を実現できる一方、不要な横方向モードの発生によって共振特性が劣化するという課題がある。そのため、Q値の劣化を抑えながら横方向モードを効果的に抑制することが求められている。

今回の口頭発表では、Hammer HeadとMetal Overlayを組み合わせた構造による横方向モードの抑制と高Q化について報告した。Hammer Head構造による横方向モードの抑制に加え、Metal Overlayによって局所的な音響位相速度を低下させることで、不要モードの抑制と高いQ値の維持を両立する設計手法について説明した。
質疑応答では、「高周波化に伴ってMetal Overlayの膜厚が薄くなる場合、薄すぎて十分な効果が得られなくなるのではないか」という質問を受けた。これに対し、Metal Overlayの効果は膜厚の絶対値だけで決まるものではなく、局所的な音響位相速度の低下量に依存するため、必要な膜厚は音速低下の程度を考慮して設計する必要があると回答した。この議論を通じて、高周波デバイスへの応用を考える際には、構造寸法の縮小だけでなく、局所的な音速分布と横方向モードへの影響を併せて検討することの重要性を再認識した。

また、他の研究者による発表からも多くの知見を得ることができた。村田製作所による「Size reduced multilayer piezoelectric substrate Device」では、積層圧電基板を用いたデバイスの小型化に関する研究が報告され、現在取り組んでいるデバイス構造の最適化に向けた新たな着想を得た。
同社による「Longitudinal Frame Structure for Suppressing Finite-Length-Induced Spurious Responses in XBARs」では、XBARデバイスにおける不要なスプリアス応答の抑制手法が報告され、自身がこれまで取り組んできたHAL-SAW共振子の横方向モード抑制とは異なるアプローチであり、不要モード抑制に関する設計手法を比較・検討する上で有益であった。

さらに、Skyworks Solutionsによる「FEM Modeling of Nonlinear Harmonics in LiTaO3 Capacitors and SAW Devices」では、LiTaO3を用いたデバイスの非線形高調波特性に関する研究が紹介された。特に、42°YXカットLiTaO3の非線形特性に関する報告内容は、これまでの自身の理解とは異なる視点を示すものであり、同材料の非線形特性について再考するきっかけとなった。

これらの発表を通じて、RF音響デバイスの構造最適化、不要モード抑制および非線形特性に関する最新の研究動向を学ぶことができた。今回得られた知見を、今後の薄膜音響デバイスの設計と性能改善に生かしていきたいと考えている。


国際会議での口頭発表

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

自身の研究成果を英語で発表し、研究背景の異なる研究者に対して、提案構造の狙いや物理的な考え方を説明する貴重な経験を得た。特に、Metal Overlayの膜厚に関する質問を通じて、設計条件とその根拠を分かりやすく伝えることの重要性を実感した。今後は、膜厚と局所的な音速低下の関係を整理し、横方向モードの抑制および高Q化の仕組みをより明確に説明できるよう、研究を進めていきたい。

会場では、大学・研究機関および企業に所属する国内外の研究者と交流し、口頭発表やポスター発表を通じて意見を交わした。所属や研究背景の異なる研究者の視点に触れることで、自身の研究課題をより広い視野から捉えることができた。また、研究成果を発信するだけでなく、相手の説明を理解し、その場で疑問点を質問することが、議論を深める上で重要であると感じた。こうした経験は、今後の研究活動に加え、英語での発表や討論の能力を高める上でも有意義であった。


国際会議会場周辺の様子

また、会議日程の合間には、ローリー市内や周辺の大学のキャンパスを見学した。ローリーを含む一帯は「リサーチ・トライアングル」と呼ばれ、大学や研究機関が集積する地域として知られている。現地の文化や米国の大学のキャンパス環境に触れたことも、海外への理解を深め、視野を広げる貴重な機会となった。

今回の国際会議で得られた知見や研究者からの意見を、今後のデバイス設計および特性評価に生かしていきたい。また、今回の経験を励みに研究をさらに発展させ、国際的な場での成果発信と研究交流を継続していきたい。

最後に、本国際会議への参加に際し、国際交流助成金によるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に、心より御礼申し上げます。また、日頃よりご指導・ご支援いただいている田中秀治研究室の先生方および研究室の皆様に、深く感謝申し上げます。

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