国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和8年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
李 垂範
(信州大学 工学部)
会議名
2026 International Symposium on Advanced Magnetic Materials and Applications (ISAMMA 2026)
期日
2026年6月28日~7月2日
開催地
Busan, Republic of Korea

1. 国際会議の概要

2026 International Symposium on Advanced Magnetic Materials and Applications(以下ISAMMA)は磁性材料・磁気物性・スピントロニクスおよび応用を広く扱う国際シンポジウムです。特にアジアを中心としながら、欧米を含む世界各国の研究者が参加する磁性分野の専門国際会議という位置づけです。INTERMAやMMMのような数千人規模の巨大国際会議ではなく、磁性材料・スピントロニクス分野に絞った500人規模の専門性の高い国際シンポジウムです。また、学協会主体のIcAUMSとは異なり、研究者主導の国際会議です。もともと日本のISPMM、韓国のSOMMA、台湾のISAMTという3つの国際会議を統合して2007年に発足しました。第1回は韓国チェジュ島で開催され、その後、仙台、台中、フーコック、クアンビンなどで開催されています。ISAMMAの研究分野はかなり広く、Spintronics、Magnetization Dynamics、Magnetic Imaging and Characterization、Hard/Soft Magnetic Materials、Magnetic Devices、Quantum and Correlated Magnetism、Emerging Magnetic Materials and Deviceなどが主要トピックです。規模もそこそこ大きく、今年のISAMMA2026では18か国から504名が参加し、398件の発表がありました。その内訳はPlenary5件、Keynote13件、Invited107件、一般口頭73件、Poster200件です。特に私が発表したSpintronicsセッションは口頭46件+Poster50件の計96件で、全分野の中でも最大級のセッションになっています。

2. 研究テーマと討論内容

私が発表した研究テーマは電子の有するスピン角運動量の流れを利用して磁性体の磁気秩序を電気的に操作する「スピン軌道トルク」に関するものです。スピン軌道トルクは次世代半導体素子であるMRAMでの応用が期待されるほか、ナノサイズの高速発信器などの新たな応用の研究が進められています。特に私は「スピン軌道トルク」を電気的に制御する研究に取り組みました。これまでの「スピン軌道トルク」は材料そのものの特性であると知られており、大きい「スピン軌道トルク」を実現するため材料探しの研究が主に行われてきました。しかし、私は「スピン軌道トルク」の大きさがすでに決まった材料系に、半導体材料固有の特性と知られる「電界効果」を融合しました。私が着目した材料は磁性金属Coと非磁性貴金属Ptからなる金属のヘテロ構造であり、本来なら「電界効果」は大きくありません。しかし、イオン性電解質という巨大な誘電効果を有する特殊な材料を利用して、金属ヘテロ構造においても「電界効果」が発現することを実証しました。さらに、「電界効果」による「スピン軌道トルク」の変調率は非常に大きく、「スピン軌道トルク」を完全に消したり、大きくするON-OFF動作の実証にも成功しました。今回の学会ではこのようなスピン軌道トルクの電界制御の物理的な起源について、そしてこれからの応用に向けてのさらなる発展の可能性について議論しました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回のISAMMA2026に出席して、単に私の研究成果を世界の研究者たちに発信するだけではなく、私の研究内容に対するたくさんのコメントをいただき、また、最近の研究動向についても把握できました。今回の学会は開催地が韓国であったため、韓国からの参加者が大勢いました。私は韓国語と日本語の両方を駆使でき、両国における研究経験があるので、韓国の研究者グループと日本の研究者グループの間で架け橋となり、共同研究の推進にも活躍できたと感じています。実際、韓国DGISTと九州大学、そして私が所属している信州大学の3大学間の共同研究を現在行っています。学会に参加して感じたことは、同じ磁性・スピントロニクス分野であっても、各国の強みとなる研究内容が異なる点です。これらの研究を融合、共同研究という形にすることで、人類の科学技術がより進歩できると強く感じました。

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