2026年5月4日から5月8日にかけて開催された「IEEE International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP) 」に、ポスター発表の筆頭著者として参加しました。
ICASSPは、信号処理分野における世界最大規模の国際会議であり、音声・音響・信号処理を中心に、画像処理や通信など、幅広い分野の研究成果が発表されます。本年は投稿件数が10,997件と例年を大きく上回り、採択率も例年より低い41%となるなど、例年以上に活発な会議となりました。国別の採択論文数の割合は、中国が61%、米国が9%、日本が4%でした。日本の割合が他のAI関連の主要国際会議と比較して高い点は、ICASSPの特徴の一つといえます。
会場では、分野を問わず活発な議論が交わされていました。中でも音楽分野のポスター発表エリアは特に盛況で、通路を歩くことも難しいほど多くの参加者で混雑しており、同分野に対する関心の高さがうかがえました。


私は、「EEG Motor Imagery Classification with Three-Branch Fusion and Multi-Axis Positional Encoding」という題目で、5月6日にポスター発表を行いました。

本研究は、脳波を用いた運動想起分類の精度向上を目的としたものです。運動想起分類とは、左拳や右拳の開閉といった身体動作を想像した際に生じる脳波から、その人が意図した動作を推定するタスクです。応用例として、身体に障害のある方の移動や機器操作を支援するブレイン・コンピュータ・インターフェースへの活用が期待されています。
近年では、脳波が持つ多面的な特徴を捉えるため、異なる役割を持つ複数の経路を設け、それぞれの経路で独自に特徴抽出を行うマルチブランチ型のアーキテクチャが提案されています。一方で、既存研究の多くは、分岐ごとの出力を単純に結合して最終層へ入力する構造に留まっていました。そのため、各ブランチから得られた特徴同士の相互作用を、十分に活用できていない可能性がありました。
そこで本研究では、各ブランチから得られる特徴の関係性を考慮しながら統合するアーキテクチャを提案しました。評価の結果、二つの主要な公開データセットにおいて既存モデルを上回る分類精度を達成し、提案手法の有効性を確認しました。
ポスター発表では、さまざまな国や地域の研究者と議論を交わし、提案手法の有効性や意義に加え、被験者ごとに生じる分類精度の差への対応策などについて、有益な示唆を得ることができました。
今回のICASSP 2026には脳波を専門とする研究者も多数参加しており、専門的な観点から提案手法に対するフィードバックを得ることができました。また、周辺分野を含む幅広い質問に回答する過程で、自身の知識を改めて整理するとともに、新たな視点や知見を得ることができました。
英語での質疑応答については、比較的簡単な質問には回答できた一方で、専門的で踏み込んだ質問に対しては、相手の意図を確認するために聞き返す場面などもあり、円滑に受け答えできたとはいえませんでした。今後は、専門的な内容についても自分の考えを正確かつスムーズに伝えられるよう、英語でのコミュニケーション能力をさらに磨いていきたいと思います。
さらに、Welcome ReceptionやCoffee Breakなどを通じて、日本国内の研究者だけでなく、さまざまな国や地域から参加した研究者とも交流することができました。多様な研究の考え方や姿勢に触れたことで、今後の研究活動に対する意欲を一層高めることができました。
最後に、本国際会議への参加に際してご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に、深く感謝申し上げます。今回得られた経験を、今後の研究活動に生かしてまいります。
