
私が参加したIR-MMW THzは1974年から世界各地で開催されている、ミリ波・テラヘルツ波・赤外光を用いた研究に関する国際会議です。発表内容は多岐にわたり、医療・バイオ、通信、物性研究まで非常に多くの分野の研究者が参加します。2026年は、初日のStudent workshopも含めて10月11日から10月16日までの6日間、アメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティにあるユタ大学で開催されました。参加者は総勢450名ほど講演者は300名ほどでした。
次回は、2027年9月に日本の福岡県で開催される予定です。
私は「Terahertz synthetic-FM-triplet generation for distortion-free stabilization」という題目で発表を行いました。第6世代移動通信システム(6G)では、300 GHz帯の高いキャリア周波数を利用した高速・大容量通信の実現が期待されています。そのためには、低雑音かつ高い周波数安定性を備えたテラヘルツ光源が不可欠であり、その実現に向けてテラヘルツ分子時計の研究が活発に進められています。これは、分子の回転遷移を基準としてテラヘルツ光源の周波数をロックすることで、安定した周波数標準を得る技術です。私は、従来の研究で主に用いられてきた分子とは異なり、対称コマ型構造を持つアセトニトリル分子に着目しました。同分子はテラヘルツ光を非常に強く吸収するため、分子時計の小型化や安定性の向上が期待できます。一方で、対称コマ型構造に由来する複雑な回転遷移スペクトルのため、精密な周波数ロッキングが困難になるという課題があります。この課題を克服するため、赤外領域で開発されたSynthetic-FM-triplet generation法をテラヘルツ領域へと拡張しました。分光測定および周波数ロッキングの実証を通じて本手法の有効性を確認するとともに、対称コマ型分子の回転遷移を基準とした周波数ロッキングに初めて成功しました。

本会議では、テラヘルツ分子時計を世界に先駆けて実証した研究者による講演をはじめ、他の周波数安定化手法や企業における取り組みなど、様々な視点からテラヘルツ周波数安定化研究の現状を知ることができました。また、会議全体を通して周波数安定化に関する発表が非常に多く、本分野への関心の高さを実感しました。電気信号や光信号を精密に制御するためには、システムが大型化・複雑化しがちですが、比較的単純な構成で高い周波数安定性を実現した報告も数多くありました。こうした研究に触れ、今後の自身の研究の発展につながる有益な知見を得られたことは、大きな収穫となりました。
最後に本研究会への参加にあたり、貴財団よりご支援を賜りましたこと、深く感謝申し上げます。
