国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和8年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
秋田 宗志
(筑波大学)
会議名
30th Annual Green Chemistry & Engineering Conference
期日
2026年6月15日~18日
開催地
SAN ANTONIO, TX, USA

1. 国際会議の概要

この度、一般財団法人丸文財団の国際交流助成により、2026年6月15日から18日にかけて米国テキサス州サンアントニオで開催された「30th Annual Green Chemistry & Engineering Conference (GC&E Conference)」に参加した。本会議はAmerican Chemical Society Green Chemistry Institute (ACS GCI) が主催する、グリーンケミストリーおよびグリーンエンジニアリング分野の国際会議であり、2026年大会は第30回の節目にあたる。会議テーマは「Building the Future: Sustainable Chemistry for Industry, Innovation, and Infrastructure」であり、国連の持続可能な開発目標SDG 9にも関連して、産業・技術革新・社会インフラの持続可能化に向けた化学と工学の役割が広く議論された。また、本会議は11th International Conference on Green and Sustainable Chemistry (ICGSC)と連携して開催され、国際色の強い会議であった。会議では40件以上のテクニカルセッションに加え、基調講演、ポスターセッション、スタートアップショーケース、ワークショップ、ネットワーキングイベント等が実施され、46か国から700名を超える参加者が集まり、400件を超える発表が行われた。発表分野は、触媒、プロセス設計、ポリマー、循環型材料、医薬品製造、AI、教育、グリーンエネルギーなど多岐にわたり、基礎研究から社会実装を見据えた応用研究まで幅広い内容で構成されていた。私は本会議においてポスター発表を行い、自身の研究成果を国際的な研究者・技術者に向けて発信するとともに、異分野の持続可能技術に関する最新動向を学ぶ貴重な機会を得た。

2. 研究テーマと討論内容

私の発表題目は「Demonstration of Epitaxial Growth and Room-Temperature Magnetization Compensation in Rare-Earth-Free Mn4-xPdxN Thin Films」である。本研究では、レアアース元素を用いないフェリ磁性材料であるMn4N系薄膜に着目し、Pd添加により磁気特性を制御したMn4-xPdxN薄膜のエピタキシャル成長と室温磁化補償の実証を目的とした。スピントロニクスデバイス、とくに磁壁移動型メモリでは、磁壁速度が飽和磁化の低減によって向上し得るため、低磁化かつ垂直磁気異方性を有する材料開発が重要である。本研究では、SrTiO3(001)基板上に分子線エピタキシー法を用いて膜厚約24 nmのMn4-xPdxN薄膜を作製し、X線回折(XRD)および反射高速電子線回折(RHEED)により(001)配向エピタキシャル成長を確認した。また、Pd-L3吸収端におけるX線吸収微細構造(XANES)とFDMNESシミュレーションを比較することで、Pdが主にコーナーサイトのMnを置換することを示した。磁気特性については、異常ホール効果(AHE)、磁気光学カー効果(MOKE)、X線磁気円二色性(XMCD)を用いた評価により、Pd組成x = 0.1と0.2の間に室温磁化補償組成が存在することを明らかにした。討論では、Pd置換サイトの判定根拠、磁化補償組成の決定方法、AHEおよびMOKEの符号反転の解釈、XMCDで観測された磁場印加時の磁気構造変化、さらにレアアースフリー材料としての環境・資源面での意義について質問を受けた。特に、グリーンケミストリーの会議であったため、希少元素に依存しない磁性材料開発が、低消費電力デバイスや持続可能な材料設計にどのように貢献できるかについて議論できた点が有意義であった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議への参加を通じて、自身の研究を専門分野外の研究者にも分かりやすく伝える重要性を強く実感した。GC&E Conferenceでは、化学、化学工学、材料科学、環境技術、産業応用など多様な背景をもつ参加者が集まっていたため、通常のスピントロニクス分野の学会とは異なり、磁化補償や異常ホール効果といった専門用語を、材料設計や省エネルギー応用の観点から説明する必要があった。その過程で、自身の研究の意義を「高速・低消費電力スピントロニクスデバイスに向けた基礎材料開発」に加え、「レアアースフリーで資源制約の少ない機能性材料の創製」として位置付け直すことができた。ポスター発表では、図や測定結果を用いて英語で説明し、参加者からの質問に答えることで、国際的な場で研究を発信する経験を積むことができた。一方で、限られた時間で研究背景、実験手法、結論を簡潔に伝える難しさも痛感した。会期中には、他分野の講演やポスターを聴講し、持続可能な化学プロセス、循環型材料、AIを活用した材料・プロセス設計など、自身の専門とは異なる研究分野の考え方に触れることができた。また、休憩時間やポスター会場では、海外の学生・研究者や産業界の参加者と研究内容だけでなく、研究環境、キャリア、持続可能性に対する各国の考え方についても意見交換を行った。英語で即座に回答する難しさはあったが、今回の経験は、今後の国際発表に向けた大きな訓練となった。特に、基礎研究を社会実装や産業応用につなげる視点は、今後自分の研究成果をどのように発展させるかを考える上で大きな刺激となった。今回得た経験と議論を今後の研究活動に生かし、より国際的に意義のある研究成果の創出を目指したい。最後に、本会議への参加を支援していただいた一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げる。

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