国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
山口 航平
(徳島大学)
会議名
50th International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves (IRMMW-THz 2025)
期日
2025年8月17日~22日
開催地
Aalto University, Espoo, Finland

1. 国際会議の概要


発表会場の様子

International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves (IRMMW-THz) は、1974年から開始され、超高周波エレクトロニクスとその応用分野に特化した最古かつ最高権威の学会の一つである。会議は通常、3年周期でアメリカ、アジア、ヨーロッパで交互に開催され、赤外線、ミリ波、テラヘルツ波領域と関連分野における科学的・技術的知識の世界規模での収集、普及、交換の促進を目的として掲げている。50回目の開催となる今回はフィンランド、エスポーにあるアールト大学にて開催された。

2. 研究テーマと討論内容


発表の様子

発表内容の概略
「Hollow spiral phase plate and test sample for terahertz vortex interferometry」の題目でポスター発表を行った。これはテラヘルツ領域の中空螺旋位相板の作製と、テラヘルツ渦位相差干渉計実証に関する成果をまとめたものである。光を用いた計測手法は非接触、精密に物体の三次元構造を取得できるため工業計測などに有用である。光の位相を用いた干渉計測では、構造を光の波長オーダーで精密に測定することが可能である。中でも光渦干渉計と呼ばれる、らせん状の破面を持つ光を用いた干渉計測法が注目されている。光渦干渉計は物体の三次元構造だけでなく、得られたらせん干渉縞の巻く向きから物体の凹凸構造を判別可能である。光渦位相差干渉計は可視光を透過しない不透明サンプルに対して三次元形状計測することが難しい。そこで、非金属物質への透過性を有するテラヘルツ波を用いた、テラヘルツ渦干渉計中心に穴が空いた形状のテラヘルツ中空螺旋位相板を作成し、テラヘルツ渦干渉計を構築したためこれを報告した。

発表には20名ほどの聴講者が訪れ、多角的に議論を交わすことができた。聴講者によって興味を抱くポイントが大きく異なったため、議論を重ねるごとに新たな発見が生まれた。以下、聴講者との討論内容の一部抜粋である。

聴講者との討論内容
Q1:どうやってらせん干渉縞が逆向きに出る?
A1:三次元構造を透過した光の等位相面は高さ方向に沿って同心円上に広がる。この位相分布に位相板によって与えられる追加され、同位相面がらせん状になる。ただし凸構造と凹構造では動径方向に向かって進む位相の向きが逆であるため、生じるらせん干渉縞の向きが逆向きとなる。

Q2: 3Dプリンタを用いて作った中空螺旋位相板の材料は何?なぜ選んだ?
A2: 3Dプリンタの材料であるアクリルとウレタンの透明樹脂を使用して作製した。これらは今回用いたテラヘルツ周波数領域に対して透過性を示している。また、材料の厚みを用いた空間位相変調する目的に対しても、テラヘルツ周波数領域で精度・確度の高い作製が確認できたため。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ポスター発表では多くの参加者に興味を持っていただき、活発な議論を交わすことができた。日本人だけでなく、現地で交流を持った研究者の方々との英語での議論では自身の英語力の未熟さを痛感する場面もあったが、事前に作成した資料やジェスチャーを用いながら、簡潔で伝わりやすい表現を選ぶよう努めた。なかでもテラヘルツ波の位相差干渉計測を研究する参加者には、テラヘルツ渦位相差干渉計測の汎用性をアピールするとともに、専門的な知見からアドバイスもいただくことができた。

また、本学会では聴講者としても非常に有意義な時間を過ごすことができた。ポスター・口頭発表ともにテラヘルツ分野の多種多様なテーマで溢れており、ミリ波~赤外線領域における研究課題の多さを改めて実感するとともに、その奥深さや面白さを再確認することに繋がった。

最後となりますが、経済的な不安なく入念な発表準備をこなし、時間的にも精神的にも余裕を持って国際会議に臨めたのは、貴財団のご支援に尽きます。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。


ポスター前での記念撮影

ヘルシンキの夜景

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