「The 23rd International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems (Transducers 2025)」は、2年に一度開催される、MEMSおよびセンサ/アクチュエータ分野に関する国際会議です。第23回目となる今回は、2025年6月29日から7月3日にわたり、アメリカ・フロリダ州オーランドのHyatt Regency Orlandoにて開催されました。
本会議は、同分野における世界最大規模の国際会議の一つであり、今回は805件の論文投稿のうち509件が採択されました。会期中には、ピエゾMEMSを用いた可変超低雑音レーザーや、触覚センサを活用した気流・臭気の同時測定技術など、独創的で先進的な研究が数多く発表されました。
次回のTransducers 2027は、2027年6月20日から24日にわたりスウェーデン・ストックホルムにて開催されます。
本会議では、「EFFECT OF DIFFUSION AT THE AU/N-SI SCHOTTKY INTERFACE IN CURRENT DETECTION SURFACE PLASMON RESONANCE SENSORS」というタイトルで口頭発表しました。
現状、化学物質の検出には、高感度と小型でトレードオフが存在します。このトレードオフを克服し、高感度・小型な化学センサができれば、外部診断の促進などに一定のニーズがあります。我々の研究グループは、高感度に化学物質を計測できる表面プラズモン共鳴 (SPR) センサを小型化することに着目しました。SPRは、光と金属表面の自由電子の共鳴現象で、共鳴条件が金属表面の誘電率に敏感なので、化学物質検出が可能です。従来は、光の反射率を計測することで、共鳴発生に伴う光吸収を読み取っていました。しかし、反射率計測用の外部光学系が必要であることから小型化困難でした。そこで、我々の研究グループは、SPRが生じる金属 (金回折格子) をシリコン基板上に形成することで、共鳴に伴う光吸収を電気的に読み取る方法を提案しました。この方法では、外部光学系が不要なので従来に比べて大幅な小型化が見込まれます。しかし、このセンサにおいて、応答が日毎に劣化する現象が確認されたので、本研究では、応答劣化の原因解明と改善案の策定を行いました。金とシリコン界面で発生する原子拡散が応答劣化を引き起こしていると考え、金とシリコンの界面に拡散防止膜を挿入したデバイスを製作し、拡散防止膜の有無で、センサの経時的安定性を比較しました。その結果、拡散防止膜の挿入により経時的安定性が改善し、原子拡散が応答劣化の原因であることが確認されました。
このような大規模な国際学会への参加は初めての経験であり、さまざまな研究者の方々と議論を交わす貴重な機会となりました。口頭発表後の質疑応答では、応答劣化の新たな要因に関するご指摘をいただくなど、今後の研究の方向性を考える上で大変参考となる有意義な議論を行うことができました。その一方で、英語での質疑応答において自分の対応力の不足を痛感し、今後さらに英語力の向上に努めていく決意を新たにしました。
また、バンケットはケネディ宇宙センターにて開催され、実物のサターンVロケットの下で食事をするという、非常に貴重な体験を得ることができました。
最後に、本会議への参加に際し、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団様に、心より御礼申し上げます。