国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
高橋 広登
(大阪大学 大学院工学研究科 電気電子情報通信工学専攻)
会議名
21st International Conference on Crystal Growth and Epitaxy (ICCGE-21)
期日
2025年8月3日~8日
開催地
中国、西安

1. 国際会議の概要


会場の外観

ICCGE-21は、アメリカ・ボストンで1966年に始まった結晶成長研究の歴史ある国際会議シリーズで、結晶成長の理論と応用を横断的に議論する場です。第21回目となる本大会は、中国・西安の曲江国際会議センターにおいて開催され、国際結晶成長機構(IOCG)、中国セラミックス学会、西北工業大学、中国結晶成長学会などの共催により運営されました。

会議では基調講演、並列セッション、ポスター展示など多様な形式の発表が行われました。さらに7日に行われたバンケットでは、世界各国の結晶成長のスペシャリストたちと研究に関する意見交換が行われました。プログラムは、核形成と成長の基礎解析から、バルク結晶成長、AIを用いたモデル化、薄膜・エピタキシー、ナノ材料、バイオマテリアル、2D材料、セラミックス、半導体、光・レーザー結晶、機能性結晶に至る幅広いトピックを網羅しました。

2. 研究テーマと討論内容


発表中の様子

私は、尿路結石の形成機序を解明するため、尿路結石主成分のひとつであるリン酸カルシウムの結晶相転移について研究を行っています。具体的には、生体内を模擬したin vitro環境において温度やpHといった条件を変化させ、リン酸カルシウムの溶解や再析出に起こる変化を分析しています。

本学術集会では、“Evaluate the pH dependence of calcium phosphate crystal phase transformation for elucidating the process of kidney stone formation”というタイトルで、尿pHの変化が生体内におけるリン酸カルシウム結石形成に与える影響を調査した結果及び考察を発表しました。

実際に手術で摘出したリン酸カルシウム結石を分析すると、その内部で結晶相転移の形跡が認められたことから、相転移は結石形成に何らかの影響を与えていることが考えられます。また、尿pHは経時的に変化し、その結果リン酸カルシウムの溶解度が変化することに着目し、尿を無機的に再現した溶液および尿路結石症患者の尿を用いてリン酸カルシウム結晶相転移、結晶成長のpH依存性を明らかにすることに成功しました。さらに、研究対象としたリン酸カルシウム結晶は尿pHの上下に対応した相転移・成長の繰り返しにより形成されたと考え、その過程を考察しました。

発表後の討論では、「尿のpHは一般的にどのくらいの値をとるのか」といった医学的な情報に関する確認や、実験条件に関する質問をいただきました。このことから、医学寄りの研究内容を異なる分野の方々に発表する際には前提条件や医学的な背景をより丁寧に説明する必要性を実感しました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


エクスカーションで訪れた兵馬俑

今回のICCGE-21参加を通じて、研究面・交流面の双方で大きな経験を得ることができました。まず、自身の研究成果を英語で口頭発表し、質疑応答に対応したことは大きな挑戦でした。限られた時間の中で自分の考えを的確に伝えるためには、発表内容の整理だけでなく、聴衆のバックグラウンドを意識した表現やスライド構成の工夫が重要であることを実感しました。また質疑応答では、英語で即座に回答する難しさを感じつつも、研究をより広い観点から見直すきっかけとなりました。

また、国際学会ならではの多様な交流を経験できました。異なる文化背景をもつ研究者と直接ディスカッションを行うことで、研究だけでなく研究者としての姿勢についても学ぶことができました。特に、世代や国境を超えた研究者同士のネットワークが今後の研究や情報交換につながる可能性を実感し、国際的な舞台で研究を発信・共有する意義を強く感じることができました。

総じて、今回の学会参加は、自らの研究を外に向けて発信する力を鍛えるとともに、最新の知識と国際的な視野を獲得する貴重な機会となりました。

最後になりますが、このような貴重な機会をいただきました一般財団法人丸文財団様のご支援に、心より御礼申し上げます。

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