環太平洋国際化学会議 2025 (The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies 2025; Pacifichem 2025) は、2025年12月15日~20日の6日間にわたってハワイ・ホノルルで開催される会議で、第9回目となる今回は、ホストソサイエティのカナダをはじめとし、日本、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、中国の7化学会が共同で主催し、世界71の国から1万人以上が参加しました。
会議では、分析化学、有機・無機化学、高分子・材料化学、生化学・化学生物学、エネルギー・環境科学、計算科学、化学教育など化学および関連分野を網羅する多数のシンポジウムにより構成され、口頭発表やポスター発表を通じて活発な議論が行われました。

会場はホノルル市内の4施設に分かれており、Hawaii Convention Centerを中心にHilton Hawaiian Village Waikiki Beach Resort、Sheraton Waikiki Beach Resort、Sheraton Princess Kaiulani Waikiki Beach にて対面形式で開催されました。いずれの施設も徒歩、または専用バスや専用トロリーで移動が可能になっており、参加者は会場間を自由に行き来しながら研究交流を行いやすい環境が整えられていました。
写真はメイン会場であるHawaii Convention Center入口ロビーの様子です。
本会議では「Effect of Functional Groups on Spontaneous Orientation Polarization and Molecular Design for Formation of Strongly Polarized Thin Films」というタイトルで口頭発表を行いました。
極性有機分子を基板上に高秩序に配向させることで、優れた物性を有する機能材料を得ることができます。特に、本研究で開発した極性低分子は、真空蒸着により成膜することで材料分子の永久双極子モーメントを高秩序に配向し、自発的な配向分極(SOP)を形成することが特徴です。これは従来の強誘電体やエレクトレットにおける分極処理を必要としないという特徴があります。
これまで材料分子を高秩序に配向させるための研究が行われていましたが、我々の研究グループは、分子内へのフッ素系官能基の導入により配向分極を制御し、強力なSOPを示す極性分子を世界に先駆けて開発してきました。しかし、含フッ素有機材料は環境負荷や将来的な応用の観点で課題を抱えています。
そこで本研究では、実験的および計算化学的な手法を駆使し、フッ素を用いずに、薄膜形成過程の分子間相互作用を精密に調整する手法を確立し、含フッ素系分子を凌駕するSOPを示す非フッ素系新規極性分子を開発しました。
本会議では、開発した材料の薄膜を振動発電素子に応用し、これまでに開発してきた含フッ素低分子材料よりも大きな発電量を得られたことも合わせて発表しました。
Pacifichem 2025に参加し、国際会議における口頭発表や多様な研究分野との交流を通じて、自身の研究および今後の課題を見つめ直す貴重な経験を得ることができました。
初めての口頭発表が国際会議ということもあり、発表前は不安でいっぱいでしたが指導教員としっかりと発表内容を準備して、聴衆に研究内容を理解してもらうことを意識して発表に臨みました。質疑応答の時間には、私の発表内容がセッションのメインテーマとはやや異なる内容であったにもかかわらず、議論を深化させるような質問をいただきました。
発表内容が聴衆に伝わったことに嬉しさを感じる一方で、英語で研究内容を論理的かつ簡潔に説明することの難しさと重要性を強く実感しました。
また他の発表を聴講することで、自身の研究の位置づけや学術的意義を改めて認識することができました。さらに本国際会議では、普段参加している学会では触れる機会の少ない分野のセッションも聴講することができ、多様な研究背景や考え方に触れることで、研究の進め方や成果の発信方法について多くの刺激を得ることができました。
本経験から、今後は語学力および研究遂行能力のさらなる向上に努めていきたいです。
最後になりましたが、本国際会議の参加につきまして、貴財団よりご支援を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。
