IRMMW-THz (International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves) は、1974年に始まった赤外線・ミリ波・テラヘルツ波分野に特化した最大規模の国際会議である。本会議は米・欧・アジアを巡回開催し、参加者は1,000名を超える規模に成長している。対象分野はデバイス・計測から生物学・医療応用まで拡大している。
2025年度はフィンランド・エスポーで開催され、35ヵ国から投稿件数700件以上のうち約650件が採択された。内訳は口頭発表261件(40.2%)、ポスター発表319件(49.1%)である。私はこのうち口頭発表として参加した。
次回2026年度は米国ソルトレイクシティ、次々回2027年度は福岡で開催とのことである。
本講演では、全方位トラッキング通信に向けたテラヘルツファンビーム走査構造に関する研究成果を報告する。これまでの検討により、提案構造においては放射ビームの方位角によって直線偏波の向きが変化するため、送受信の偏波が合わない位置では受信信号強度が小さいことが確認されている。この課題に対処するため、本研究では新たに円偏波を導入し、方位角に依存しない安定した通信を実現する構成の実験を進めている。講演では、直線偏波・円偏波それぞれの放射特性および受信特性の比較結果を示し、円偏波化による通信安定性について考察する。
12分の口頭発表に続く3分間の討論では、Adelaide大学のWithawat教授から、(1) なぜファンビームなのか、ペンシルビームでは不十分なのか、(2) 円偏波化は3Dプリンタを用いてより簡便に実現できるのではないか、という質問を受けた。いずれも本質を突いた指摘であり、特に(2)については講演後に個別で議論し、参考となる先行研究を紹介していただいた。
今回の学会には研究室から単身で参加したため、現地で積極的に交流を図った。他大学の博士課程学生であるFilip氏やMorgane氏らと親しくなり、昼食や夕食を共にするなど交流を深めることができた。また、夜にはヘルシンキ市内に出かけ、学会以外の場でも国際的なつながりを築けたことは大きな成果である。
英語については日常会話には支障がなかったが、専門外の発表や強いアクセントの英語は理解が難しく、今後さらなるリスニング力の向上が必要であると感じた。また、日本人研究者同士でも交流でき、国内外を問わず学術ネットワークを広げる良い機会となった。
このような素晴らしい機会を得るにあたって、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に心より御礼申し上げます。