SPIE Photonics West BiOS は、生体光学分野における世界最大規模の国際会議であり、世界50カ国以上から5,500人を超える光学研究者、臨床研究者、および企業研究者・技術者が参加する、バイオフォトニクス、レーザー、オプトエレクトロニクス分野の主要国際学術集会である。本会議では、医療用フォトニクス、治療・診断技術、新規イメージング手法、ニューロフォトニクス、量子バイオフォトニクス、組織光学、ナノ/バイオフォトニクスなどの研究に関する最新成果が発表される。さらに特別企画として、ライフサイエンス分野の最先端トピックに関するプレナリーセッションや、トランスレーショナル研究および脳科学研究に関するパネルディスカッションが開催され、国際的な研究交流と産学連携の促進が図られた。
研究テーマは In silico evaluation of 755-nm picosecond and nanosecond laser treatments for nevus of Ota であり、皮膚色素性疾患である太田母斑に対して広く用いられている波長755nmピコ秒レーザーおよびナノ秒レーザーの有効性と安全性を理論的に比較評価することを目的とした。太田母斑は患者のQOLを著しく低下させる疾患であり、従来のナノ秒レーザー治療の安全性向上を目的としてピコ秒レーザーの臨床応用が進められているが、両者の治療効果および合併症率に関する臨床報告には一貫性がなく、適切な照射条件は未だ確立されていない。
本研究では、病変破壊閾値フルエンスとモンテカルロ光伝搬計算を統合したレーザー生体作用の数理モデルを構築し、治療に必要な照射条件の至適範囲を推定した。その結果、ピコ秒レーザーは至適範囲内で使用することで合併症リスクを抑制しつつ効果的に病変を破壊できる可能性が示された。一方、ナノ秒レーザーでは、至適範囲内であっても高フルエンス条件下では周囲組織に熱損傷が生じ得ることが確認された。さらに、既報の臨床研究との比較により、本モデルの妥当性が裏付けられた。
本発表に対して、レーザー皮膚治療における理論モデルの臨床応用可能性、臨床照射条件の標準化、および他色素性疾患への展開可能性について活発な討論を行った。本研究は、ピコ秒レーザー治療の有効性と安全性を理論的に示すとともに、照射条件設定に客観的根拠を提供する点で、臨床レーザー治療の高度化に寄与する成果である。

本国際会議では、口頭発表を通じて、欧米およびアジア諸国の研究者と研究内容について意見交換を行い、レーザー皮膚治療および生体光学分野における最新の研究動向を把握した。特に、レーザー生体相互作用の数理モデル、臨床照射条件の最適化手法、および色素性疾患治療への応用可能性について活発な議論を行い、多様な視点から有益な助言を得た。
また、臨床研究者や工学系研究者との交流を通じて、基礎研究成果を臨床応用へと橋渡しするトランスレーショナル研究の重要性を再認識した。特に、皮膚を対象とした治療に限らず、光線力学療法や光免疫療法など他臓器のがん治療においても、生体組織光学に基づく基礎解析が有効かつ安全な治療の実現に重要であることを再認識し、今後の研究展開に向けた具体的な可能性を見出すことができた。さらに、産業界の研究者とも情報交換を行い、医療機器開発・臨床実装に関する最新動向について理解を深めた。
最後に、本国際会議への参加にあたりご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に、深く感謝申し上げます。
