国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
大上 能悟
(理化学研究所)
会議名
SPIE Optics + Photonics 2025
期日
2025年8月3日~7日
開催地
アメリカ、サンディエゴ

1. 国際会議の概要


展示会の様子

SPIE Optics + Photonics 2025は、光科学に関する最大級の国際会議の一つです。毎年夏季開催で、今年は2025年8月3日~7日に、米国カリフォルニア州サンディエゴのコンベンションセンター(San Diego Convention Center)で開催されました。主催は非営利の専門学会である国際光工学会 (SPIE)です。1955年設立以来、光科学分野の研究・教育・産業交流を推進しています。

プログラムはナノスケールから宇宙スケールまで幅広くカバーする4つの領域から構成されています:
• Astronomical Applications
• Nanoscience + Engineering Applications
• Optical Engineering + Applications
• Organic Photonics + Electronics

更には100以上のブースがある展示会も同時に開催されていました。

2. 研究テーマと討論内容


発表の様子

今回の国際会議で私は「光学利得を持つ系における電磁場の量子ゆらぎ」について口頭発表を行いました。電磁場の量子ゆらぎを取り扱う量子光学の理論研究は、光学利得を持たない系を取り扱うものが殆どでした。一方で、近年の物質科学では、電圧印加などによって駆動された「非平衡物質」が注目されています。この物質群は平衡状態よりもエネルギーの高い状態に駆動されているという性質ゆえに、光学利得を齎すことがあります。

以上のことを踏まえて、本研究では、従来用いられるランジュバンノイズ法と呼ばれる理論的手法を拡張し、光学利得がある場合にも対応可能な一般化理論を構築しました。これを用いて、電磁場の量子ゆらぎに由来する力発生(ファンデルワールス効果)が光学利得によってどのように変調されるか計算しました。通常のファンデルワールスフォースは引力(縦方向)ですが、光学利得がある場合、力の向きを横方向に向けられることがわかりました。

討論時間では「ファンデルワールス効果と関連するカシミール効果について光学利得が及ぼす影響は?」など、更に理論研究を発展させる話題を議論しました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


会場のテラスからの景色

SPIEが開催する大規模な会議へのオンサイト参加は2回目で、コロナ禍・物価高になって以降初めてでした。いくつかの学会にオンライン参加・研究発表したことはありましたが、オンサイトのように討論が盛り上がらないことも多く、ネットワーキングも難しいため、少し寂しく感じていました。

今回は丸文財団にご支援いただき、高いモチベーションで学会参加することができました。普段は聞けない異分野のセッションに立ち寄って初対面の方と討論することができたり、自分の研究について異なる観点からのコメントをいただけたり、新しい繋がりを作ることもできました。

また、日常とは異なる環境に身をおき、雑務から離れて、自由に発想をめぐらせる時間を取れたことも大変幸せでした。そのお陰で、新たな研究テーマの種を見つけることもできました。

このような素晴らしい機会を得るにあたって、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に心より御礼申し上げます。

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