21st International Conference on Crystal Growth and Epitaxy (ICCGE-21)は、結晶成長全般について取り扱う国際会議で、中国の西安にあるコンベンションセンターで開催されました。ICCGEは、1966年にアメリカのマサチューセッツ州のボストンで第1回が開催されて以来、約3年に一回の頻度で開催されてきました。
本会議では毎朝Keynote Lectureが開催され、その後“Fundamentals of Nucleation and Crystal Growth”, “Bulk Crystal Growth”, “Advances in Modeling Crystal Growth Processes Including AI”, “Thin Films and Epitaxial Growth”, “2D Materials and Technologies”, “Growth at the Nanoscale: Nanocrystals, Nanowires, Nanomaterials”, “Characterization of Crystal Structure, Defects, Impurities and Physical Properties”, “Semiconductors”, “Optical and Laser Crystals“, “Crystals of Piezoelectric, Dielectric, Ferroelectric Materials”, “Detector Materials”, “Industrial Crystallization”, “Crystallization of Organic and Biological Materials”, “Crystals for Photovoltaics and New Energy Applications”, “Thermoelectric Materials: Design, Synthesis, Growth and Properties”, “New Methods and Techniques for Crystal Growth”, “Emerging Crystalline Materials”という17のセッションに分かれて口頭発表が行われました。
本会議において私は、“Elucidating the in vivo Mechanism of Calcium Phosphate Crystal Formation in the Early Stage of Kidney Stone Formation”という題目で口頭発表を行いました。
尿中には様々な成分が溶け込んでおり、それらが尿路中で結晶化すると強い痛みを伴う尿路結石症を引き起こし、敗血症や腎不全などの合併症を併発すれば死に至ることもあります。近年、その罹患率は増加の一途をたどっており、社会的にも重大な課題となっています。尿路結石の形成メカニズムとしては、まずアパタイト結晶が腎臓組織内で凝集し、それを起点として結石が大型化していく可能性が示唆されてきました。したがって、結石形成のファーストステップであるアパタイト結晶凝集体の形成・成長について更に詳細に理解することができれば、将来的に尿路結石症の予防策を立案できるようになると期待されます。
そこで本研究では、体内でのアパタイト結晶の形成が促進されたモデルマウス(血管石灰化マウス)について、その腎臓部をレーザーラマン分光法などで分析・計測することで、腎臓中でのアパタイト結晶凝集体の形成時空間ダイナミクスを探究しました。その結果、腎臓内でアパタイト結晶が形成しやすい組織部位を特定することに成功しました。
また、質疑応答では今後の研究の方針について貴重な意見をいただくことができたため、研究の深化に向けた具体的な課題や新たな視点を得る大変有意義な機会となりました。
本国際会議では、英語での口頭発表および質疑応答を通じて、自身の研究を国際的に発信する貴重な経験を得ることができました。議論の場では、多様な研究者から専門的かつ建設的な質問を受け、それに対応する過程で自分の研究内容をより明確かつ簡潔に伝える力を養うことができたと感じています。
これまで国内学会でオンライン発表の経験はありましたが、現地に赴いて学会に参加したのは今回が初めてでした。そのため、会場の熱気や研究者同士の活発なやりとりを肌で感じることができ、対面での議論や交流の重要性を強く実感しました。特に、予想以上に多くの海外の研究者と直接意見交換を行うことができ、研究の進め方や着眼点の違いに触れることで、新たな視点や発想を得る大きな機会となりました。
全体を通じて、世界の第一線で活躍する研究者が活発に意見交換を行う場に参加できたことは、研究者としての成長に直結する大変有意義な経験であり、今後の研究活動への大きな励みとなりました。
最後に、本国際会議への参加にあたって、一般財団法人丸文財団の多大なるご支援を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。