国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
数野 未結
(上智大学 大学院理工学研究科 理工学専攻電気・電子工学領域)
会議名
17th European Conference on Applied Superconductivity (EUCAS2025)
期日
2025年9月20日~25日
開催地
Alfandega Congress Center, Port, Portugal

1. 国際会議の概要

EUCAS (European Conference on Applied Superconductivity) は超伝導分野における世界最大規模の国際会議であり、2年に1度開催される。
本年は、ポルトガル・ポルトのAlfandega Congress Centerにて9月20日から25日の6日間にわたって開催された。

超伝導マグネット応用や量子システム、超伝導材料など、超伝導に関する様々な研究について、大学、研究機関、企業などの世界各国の研究者が発表し議論を交わした。

次回のEUCASは、2027年9月5日~9月10日にドイツのハイデルベルクで開催予定である。

2. 研究テーマと討論内容

今回、『Estimation of mutual inductance caused by misalignment of JT-60SA TF coil』というテーマのもと発表を行った。

本研究は、核融合実験炉JT-60SAに関する研究である。JT-60SAはJT-60SA 計画の下建設されており、JT-60SA 計画は核融合エネルギーの早期実現のための日本と欧州を含む33カ国による共同プロジェクトである。装置内にはトロイダル磁場(TF)コイル、平衡磁場(EF)コイル、中心ソレノイド(CS)の3種類の超電導コイルが設置されている。私はこれらの超電導コイルについて研究を行っている。

TFコイルが通電中に常伝導転移(クエンチ)した場合には、超伝導状態で蓄えられた磁気エネルギーを解放するために、電流を遮断する必要がある。このために、隣り合った2つのTFコイルの電圧の差(クエンチ検出電圧)を測定し、その差が閾値を超えた場合にはクエンチしたとみなして電流を遮断するクエンチ検出器を使用している。TFコイルでは複数箇所において設計からの設置誤差を算出しており、最大7.3 mmの設置誤差が生じている。EFコイルに通電した際、クエンチの発生なしにTFコイルのクエンチ検出電圧に閾値を超える電圧が確認され、不必要な電流遮断が生じている。理想的には誘導電圧は発生しないが、実際にはコイルの製作精度や設置の誤差により、コイル間相互インダクタンスが変化し、誘導電圧が発生したと考えられる。

本研究では、設置誤差が生じた際の相互インダクタンスを調査するため、超伝導コイルを模擬した解析モデルを作成した。また、回路モデルを作成し、算出した相互インダクタンスを用いて設置誤差に対するTFコイルに発生する誘導電圧の推定を行なった。その結果、コイルの設置誤差により誘導電圧が生じることが示された。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回が初めての国際会議への出席であったため、緊張もあったが、できる限り多くの参加者と積極的にコミュニケーションを取ることを心がけた。英語での質疑応答には不安があったものの、発表を通じて国内外の研究者から多くの質問や意見をいただき、活発な議論を交わすことができた。特に、自身の研究テーマである超伝導コイルの設置誤差が及ぼす影響に関心を示していただき、本研究の意義や今後の発展可能性を改めて実感する機会となった。

また、自身の研究と類似した分野に取り組む研究者の方々から貴重な知見を得ることができ、今後の研究活動に大いに参考となる経験となった。この経験を糧に、引き続き研究を発展させていきたい。

最後に、本研究の発表を行うにあたり、ご支援をいただいた一般財団法人丸文財団様に心より感謝申し上げます。

 

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