International Conference on Mobile and Miniaturized Terahertz Systems (ICM2TS) は、ドイツの MARIE (Mobile Material Characterization and Localization by Electromagnetic Sensing) が主催する、テラヘルツ技術を中心とした国際会議です。この会議は、前身である International Workshops on Mobile Terahertz Systems (IWMTS) を基にしており、今年で第7回目の開催となります。今回の会議は、2025年2月23日から26日の4日間にわたり、ドバイの Hilton Dubai Palm Jumeirah にて開催されました。会議は、テクニカルセッション、基調講演、ポスターセッションの3つの部分で構成され、テラヘルツ技術に関する最先端の研究成果や応用例について議論が行われました。
今回は、Terahertz in-vivo communicationのテクニカルセッションにおいて「Non-Contact Ultrasound Sensing Platform Towards In-Vivo Applications Based on Terahertz Photoacoustic Effect and Laser Vibrometry」という題目で口頭発表を行いました。
超音波イメージングは、非侵襲的な検査において広く使われている技術です。しかし、これまでの研究や応用では、主に接触型の超音波トランスデューサが使用されてきました。このようなアプローチでは、創傷と火傷などのエリアは使用不可能であり、さらにユーザーの皮膚を圧迫することで、センシング結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。パルス赤外線レーザで光音響効果を通じて超音波を発生する研究もありますが、高エネルギーのパルスを生成するためには、大型で重量のあるデバイスが必要となり、実用化には至っておりませんでした。本研究では、テラヘルツ光音響効果とレーザードップラ計を用いた非接触センシングシステムを提案しました。連続波のテラヘルツで光音響効果を通じてサンプル溶液中に超音波を生成し、レーザードップラ計でその超音波を検出することで、完全非接触のテラヘルツ光音響イメージングが実現することをできました。概念実証として、サンプル溶液を満たしたペットボトルおよびゼラチンファントムを用いて測定を行い、そのイメージング結果を会議で発表しました。発表後には、テラヘルツの焦点サイズやシステムの解像度などの関する質問がいただき、さらには今後の測定対象についても議論が行われました。
今回の会議では、世界中のテラヘルツ研究者たちとさまざまな意見を交換し、非常に有意義な時間を過ごすことができました。私が所属する研究室では、主にヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)に関する研究を行っており、普段はテラヘルツ分野の研究者と深く議論する機会が限られています。しかし、今回の会議を通じて、HCIの視点ではなく、テラヘルツ分野の専門家からの知見を得ることができました。これにより、テラヘルツに対する理解が深まっただけでなく、テラヘルツをHCIにどのように活用するかについての新たな示唆を得ることができました。研究発表以外においても、学会主催の様々なソーシャルプログラムを参加しました。ダウ船でのクルーズや砂漠でのディナーなどのイベントは特に印象的で、ドバイの文化や魅力を深く感じる貴重な機会となりました。
最後に、本会議への参加にあたり、一般財団法人丸文財団に多大なるご支援をいただき、心より御礼申し上げます。