Pacific Rim Meeting (PRiME 2024) は1987年以来ECS、ECSJ、KECSが共同主催している電気化学学会の中でも世界有数の会議であり、今回で第9回目となる。
化学系から電気系まで幅広いトピックについて議論を行う。
ハワイコンベンションセンターにて2024年10月6日~11日の計6日間にわたって開催された本会議は、シンポジウム、口頭発表、ポスター発表など含め、計5,000件を超えるプレゼンテーションが行われた。現地の学生から日本も含め様々な国から参加しており、すべてのプログラムにおいて、意見交換など活発に議論が行われていた。
私は本会議にて「Electrostatically Tunable PN Junction in 1L-MoTe Formed By Gold-Mediated Exfoliation」という題目でポスター発表を行った。
遷移金属ダイカルコゲナイド (TMD) であるMoTe2という材料について研究を行った。この材料は室温で励起子を形成し、単層において直接遷移型半導体、発光波長が約1150nmであり光通信波長帯であるという特徴をもつ。単層MoTe2を作製するにはテープ剥離法と呼ばれる手法が主に使われてきた。しかしながら得られる面積が極めて小さいためデバイス作製が困難であるという問題点がある。そこで我々は金剥離法と呼ばれる新たな手法を用いて単層MoTe2を作製した。また得られた単層MoTe2を用いて電界効果トランジスタ (FET) を作製し、その電気特性評価を行った。キャップ層としてhBNを単層MoTe2上に堆積していたとしても、真空排気を行うことで閾値がシフトし電気特性に影響を及ぼすことを示した。
また、トップゲート電極を用いた局所的キャリア密度制御技術を用いてMoTe2チャネル内にPN接合を形成できることを示すとともに、このPN接合に光照射することで光生成電流が発生することを明らかにした。
他グループからは金剥離法の条件やメカニズムに関する質問を受けることが多く、情報交換を行うことができた。今後の研究に活かせるような情報や多くの刺激を受けることができた。
本会議にて層状物質をはじめ、多くの発表を聴くことができた。我々は金剥離法を用いて大面積な単層膜を作製しようとしているが、同様の方法で銀を用いて大面積単層膜を作製している研究室の方がおり、蒸着やエッチング条件など詳細な試料作製条件について意見交換することができ、今後の研究に活かすことができるような議論を深めることができた。また、他分野の発表でも今後の発表に活かせるようなスライドの見せ方や発表方法などを見ることができ、多くの刺激を受けた。
会場の案内から発表、質疑応答まですべて英語で会話をすることを初めて経験した。不慣れな英語での議論では聞き取れず再度聞き直したり、言葉に詰まることもあったが海外の方と自身の行っている研究について議論を行うことができ、非常に良い経験であった。
最後に本会議への参加にあたりご支援いただきました、一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。