国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
内田 健人
(京都大学 理学研究科)
会議名
2024 Ultrafast Dynamics and Ultrafast Bandgap Photonics
期日
2024年6月17日~21日
開催地
ギリシャ、クレタ島

1. 国際会議の概要

私が参加した2024 Ultrafast Dynamics and Ultrafast Bandgap Photonicsは、2016年から米国・欧州で開催されている超高速現象に関連した一連の研究集会の2024年版にあたります。この研究集会では主に固体材料におけるアト秒(10-18 s)からピコ秒(10-12 s)スケールの超高速現象や光誘起非平衡状態に関する最新の成果が発表されています。2024年は、6月17日から6月21日までの5日間、ギリシャのクレタ島で開催されました。講演者は約140名で、この研究会では全員が招待講演者で、一般的な同分野の国際学会よりも長めの30分の講演時間が各発表に確保され、研究の詳細な内容を議論できる点が特色となっています。

次回は、同年9月からアメリカ合衆国アリゾナで光誘起の準安定状態をトピックとして研究会が開催される予定です。


研究会の様子

研究会会場近くの様子

2. 研究テーマと討論内容

この研究集会では“ Nonlinear emission from dressed exciton in thin layer WSe2”という題目での発表を行いました。高強度なレーザー光を物質に照射することで、固体の性質を瞬時かつ自在に変化させることは超高速レーザー科学における究極の目的の一つです。光による高速な物性制御に向けて着目されている電子状態に光ドレスト状態があります。光ドレスト状態は、レーザー光照射下で物質中の電子が光と強く相互作用することで形成される状態であり、光の強度や偏光・周波数を変えることで、電子構造を変化させることができるなどの特徴を持ち、近年盛んに研究が行われています。私は、光ドレスト状態が超短光パルス下でどのように形成されるかに着目し、その形成ダイナミクスを物質から放射される光スペクトルの測定により取り出せることを提案し、実際に原子3層分の薄さしかない単層WSe2の励起子とよばれる電子状態が光ドレスト状態を形成する際のダイナミクスを実験によって明らかにしました。発表後には、実時間上でのスペクトル構造のダイナミックな変化に関する点や、複数の非断熱遷移による干渉効果に対する指摘・質問をいただき、有意義な講演となりました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回の研究会では、私の発表と類似した内容の発表がいくつかあり、それらの研究者と知り合い、議論や意見交換の機会を得られたのが最も大きな成果である。また、超高速現象の著名な研究者の発表も多くあり、最新の研究動向や分野としての方向性を知ることができたことも大きな収穫である。例えば、格子自由度とスピン自由度の結合に伴って生じる格子駆動誘起の磁気応答は研究のホットトピックとなっていることがよく分かった。また5日間にわたって、新たな研究テーマの方向性などを議論できたことも良かった点である。

最後に本研究会への参加にあたり、貴財団よりご支援を賜りましたこと、深く感謝申し上げます。

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