International Conference on Optical MEMS and Nanophotonics(OMN)は、光MEMSならびにナノフォトニクス分野における大学・企業の研究者が多数参加する国際会議です。本会議は、1996年にアメリカのコロラドで初めて開催され、その後、毎年開催されています。28回目となる今回は、スペイン,バスク地方の街サンセバスティアンのサンセバスティアン水族館にて開催されました。7月28日から8月1日の5日間の会期中に、58件の口頭発表と44件のポスター発表が執り行われ、バイオセンシングや光コンピューティング、光イメージングやMEMSアクチュエータなどの分野における最先端の研究に関する深い議論が交わされました。
次回の会議は、2025年7月にタイ,チェンマイにて開催される予定です。
本会議にて、私はFabrication and characterization of VO2 kirigami electrothermal MEMS actuatorのタイトルにて口頭発表を行いました。近年、内視鏡バイオプシー分野において、より高精度かつ定量的な医療診断を行うために、測定対象に対してフォーカストラッキングを行うMEMSレンズスキャナーの開発が期待されています。しかし、従来のMEMSレンズスキャナーでは、スキャンレンジがアクチュエータの機械的変形量に制限され、小型かつ低消費電力で長レンジのスキャンを行うことは難しいものでありました。本研究では、光軸方向のピストン運動に加え、ステージを傾けるチルト運動が可能で、それら駆動と自由形状レンズとを組み合わせることで超長スキャンレンジを実現しうるVO2熱駆動切り紙MEMSアクチュエータを新たに提案し、開発を行っています。本会議では、提案アクチュエータにおける多自由度駆動のための熱・機械的デバイスデザインに加え、実際に作製したデバイスでの温度分布や駆動評価に関する発表を行いました。
本会議は光MEMSとナノフォトニクスを中心とした学会であったため、他のMEMS関連の会議と比較し、熱駆動アクチュエータやレンズスキャナーとという点で類似した発表が多くありました。そのため、アクチュエータの変位や制御といった一般的な議論に加え、アクチュエータ内部の温度分布が駆動に与える影響や、その抑制方法、実用化に必要な光学的条件といった踏み込んだ議論を交わすことができました。このことは、互いの研究を進化させる良き刺激となったほか、自身の研究を客観的かつ多角的に分析し、今後の研究方針を決定するうえでの貴重な材料となりました。また、本会議が私にとって初めての国際学会での発表でした。事前に発表準備をしていたこともあり、発表自体は問題なく行えましたが、その後の意見交換や他参加者の発表では、ディティールの正確な伝達、理解に不自由を感じる場面もあり、今後グローバルな場で研究活動を行ううえで、自身の語学力の向上は急務であると強く感じました。
最後に、本国際会議への参加にあたり多大なるご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。