Ultrafast Phenomena Conferenceは「超高速現象」に関連する研究・技術に携わる科学者・技術者が一堂に会する最高の国際フォーラムとして知られている。原子、分子、凝縮系の物理学者、物理化学者、生物物理学者、そして新しいツールや手法を開発する科学者が一堂に会し、ピコ秒(1ps=10-12秒)から数百アト秒(1as=10-18秒)という超高速な時間スケールの科学に取り組むまたとない機会である。
会議は1976年に始まり、2年ごとに開催されている。本年度はバルセロナのWorld Trade Centerにて5日間にわたって開催された。採択率は約70%であり、14件の招待公演、118件の口頭発表、169件のポスター発表が執り行われた。
“Generation of Rotational Wave Packets at High-Lying Vibrational States with Mid-Infrared Pulses”という題でポスター発表を行った。発表内容は、赤外フェムト秒パルスを用いて、二酸化炭素分子の分子振動を強く励起しつつ分子集団全体の配列を誘起、観測したというものである。二酸化炭素分子は変形させることで金属表面におけるメタノールへの変換が促進することが知られており、二酸化炭素の振動励起はメタノールへの変換のための重要な要素技術の一つである。今回二酸化炭素に与えたエネルギーは30000Kであり、メタノール変換の活性化障壁の約4倍に相当し、カーボンリサイクルへの第一歩となる成果である。また分子集団をさまざまな方向に配列させた状態で反応を制御することができれば、メタノール変換の詳細な反応機構を捉えられる可能性があり、科学的にも重要な価値がある。
国際会議での発表は2回目であり、ポスターでの発表は今回が初である。一通り説明するための原稿は準備していたが、口頭発表とは異なり説明途中での質問や議論などがあり、上手く意図が伝えられないことがあった。自身の英語能力の拙さを痛感したが、また具体例やジェスチャーを使った説明の重要性も実感でき、良い経験となった。議論では、主に今後の発展についての質問やアドバイスなどを伺うことができ、今後の研究を考える上で良い知見が得られた。
講演の聴講では、本会議の参加者が新しい技術や手法に関心があるという特徴からか、多くの研究者が論文で発表されていない内容や新しいツールの提案などをされており、非常に刺激的で興味深い内容が多く、大変意義のある会議となった。
最後に、本国際会議への参加にあたり多大なご支援を受け賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。