国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
辻 流輝
(筑波大学 数理物質系 物質工学域)
会議名
ECS Pacific Rim Meeting (PRiME 2024)
期日
2024年10月6日~11日
開催地
Hawaii Convention Center & Hilton Hawaiian Village, Honolulu, Hawaii

1. 国際会議の概要

PRiME 2024 (Pacific Rim Meeting on Electrochemical and Solid-State Science) は、電気化学および固体科学に関する世界的な会議であり、2024年10月6日から11日にかけて、ハワイ州ホノルルのハワイコンベンションセンターとヒルトン・ハワイアン・ビレッジで開催されました。

この会議は、The Electrochemical Society (ECS) 、The Electrochemical Society of Japan (ECSJ) 、およびThe Korean Electrochemical Society (KECS) の共同主催で行われ、1987年以来、太平洋地域の主要な国際会議として定期的に開催されています。

PRiME 2024では、電気化学および固体科学技術の分野における最新の研究成果や技術革新が発表され、学界、政府、産業界から多数の専門家や学生が参加しました。 会期中は、技術展示、ポスターセッション、ネットワーキングイベントなどが行われ、参加者同士の交流や情報共有が促進されました。

このように、PRiME 2024は、電気化学および固体科学の最新動向を把握し、国際的な研究者ネットワークを構築するための重要なプラットフォームとなっています。

2. 研究テーマと討論内容

研究テーマ
Over 5,000 h at 85 ℃ Thermal Stability of Encapsulated Carbon–Based Multiporous–Layered–Electrode Perovskite Solar Cells(封止された炭素を基軸とした多層多孔質電極型ペロブスカイト太陽電池の85 ℃での5,000時間を超える熱安定性)

討論内容
封止された炭素電極を用いたペロブスカイト太陽電池(MPLE-PSCs)の熱安定性を向上させるための最適な封止方法とペロブスカイト組成の組み合わせを検討しました。本研究では、以下の点について議論しました。
1.研究目的
ペロブスカイト太陽電池(PSCs)の実用化には、高い熱安定性を達成することが重要です。本研究では、85 ℃で5,000時間を超える熱安定性を示す方法を開発しました。
2.実験方法
2種類の封止構造(熱可塑性樹脂フィルムを用いた「オーバーシーリング」と「サイドシーリング」)。2種類のペロブスカイト組成((5-AVA)x(MA)1-xPbI3 と (FA)0.9Cs0.1PbI3)。ISOS-D-2プロトコルに従い熱安定性を評価。
3.主な結果
封止なしの場合、(FA)0.9Cs0.1PbI3 の方が高い熱安定性を示しました。一方、(5-AVA)x(MA)1-xPbI3 を使用しオーバーシーリングを施した場合、熱分解が効果的に抑制され、5,072時間後も初期効率の91.2%を維持。サイドシーリングでは水分の侵入量がオーバーシーリングに比べ約126万倍多く、ペロブスカイト結晶の劣化を加速。
4.重要な知見
一般的に熱に敏感とされるMAベースのペロブスカイトでも、適切な封止を施せば熱安定性が大幅に向上することが示されました。ペロブスカイト組成と封止技術の適切な組み合わせが、さらなるデバイス安定性の鍵であることを強調。

この議論を通じて、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた熱安定性向上の具体的な戦略についての理解を深めました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議では、多くの講演を聴講する機会がありました。特に、ペロブスカイト太陽電池のセッションでは、最新の材料開発や世界最高レベルのデバイス性能を達成した研究について議論が行われ、これらの成功の要因を深く学ぶことができました。また、研究者同士の直接的な意見交換を通じて、グローバルな視点での知識を広げる貴重な機会となりました。自身の発表では、多数の外国人聴衆にご参加いただき、研究内容を共有することで、自分の研究に対する関心を高めていただきました。さらに、質問や議論を通じて新たな視点を得ることができ、将来的な共同研究の可能性について具体的な話が進むきっかけを作ることができました。

この国際会議への参加を通じて、最新の科学的知見の吸収だけでなく、国際的なネットワークの構築や研究者としての視野を広げる大きな成果を得ることができました。

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