この度はアメリカ電気化学会(The Electrochemical society, ECS)、日本電気化学会(ECSJ)、韓国電気化学会(KECS)合同のECS PRiME 2024に参加した。通常のECS meetingは半年に一度開催されるが、日米韓合同開催であるPRiMEは4年に一度行われており、世界60ヵ国から5,000人ほどが参加者する大規模な集会である。今年は10月6日から11日にかけてホノルルのHawaii Convention CenterとHilton Hawaiian Villageで開催された。セッション数は500を超え、バッテリーや燃料電池、電解合成、水電解といった電気化学の幅広い分野について連日発表が行われた。申請者はPolymer Electrolyte Fuel Cells and Water Electrolyzers 24のセクションの中のI01E-ELX-PTLのセッションで口頭発表を行った。
研究テーマ
再生可能エネルギーによる水電解で作られるグリーン水素は将来のエネルギーキャリアとして期待されている。一方、コスト低減のために高電流密度での運転が必要となるが、そうした条件では泡が大量に発生する。発生した泡は電極表面を被覆して触媒反応を妨げるほか、電解液の電導度を下げるなどして、水電解効率を低下させる。したがって、泡を電極構造内部から脱離する必要がある。
本研究では、電極担体のマクロな3次元構造を最適化することで泡による効率低下を抑えることを目標にした。Ni網を重ねて厚みの異なる電極を作成し、電極構造の厚みが反応効率に与える影響について考察した。厚みが増加すると単位当たりの表面積は増加し、反応に必要な過電圧は減少するが、同時に泡が構造内部に堆積しやすくなるため過電圧は増加する。これらのバランスによって存在する最適な厚みを明らかにした。またハイスピードカメラによる泡の解析から、網の開き目が小さいほど泡の堆積が促進されていることを確認した。用いる触媒や電解質の条件により、生成する泡の大きさは異なるため、各条件での泡の特性に基づいて電極構造を最適化する必要があることを明らかにした。
討論内容
口頭発表においてはいくつか質問や助言をいただいた。主に泡の測定方法についての質問と、応用についての質問があった。泡の解析方法についての説明のほか、今回の結果が現在主流のアルカリ水電解に加え、様々な水電解の電極に応用可能であることを回答した。
国際学会は今回が初の参加であり、質疑等緊張していたが、本番は特に問題なく終えることができた。自分の研究分野と同じ水電解や電極構造、泡関連の発表を通して、最先端の研究やアプローチを学ぶことができた。
またポスターセッションでは、海外の研究者の発表を積極的に回り、コミュニケーションをとるよう心掛けた。口頭発表で印象に残った学生や、海外を拠点に研究する日本人の方など、様々な人と交流する機会を持つことができた。
今回の経験を通して、国際学会の雰囲気に触れ、有意義な時間を過ごすことができた。再び成果を出して国際学会に出席できるよう、決意を新たにする機会となった。このような国際学会への参加に際し、貴財団から多大なご支援を賜りましたことに心より感謝申し上げます。