本研究の発表のために参加した会議、MicroTAS (Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences) は、年に一度開催されるバイオ・MEMS・医療マイクロマシン分野で最も権威のある学会の一つであり、例年約1,000件の発表が行われている非常に大規模な国際学会です。第28回目となる本会議は2024年10月に5日間にわたりカナダ・モントリオールの国際会議場であるPalais des congrès de Montréalで開催され、計1,300人以上の参加者が集いました。
本会議は、医療・生命科学・機械・電気などの幅広い分野における計測・分析技術の発表が主軸であり、特にこれらの異分野が融合した技術に関する情報収集やディスカッションの場となります。そのため、例年アジア・ヨーロッパ・アメリカ各地域の研究者が忌憚なく意見を交わすことのできる場となっており、自身の研究成果を世界に広く発信するとともに、最先端で活躍する研究者から多くのフィードバックを受けることのできる大変貴重な機会となりました。
次回のMicroTAS会議は、2025年11月2日~6日にオーストラリアのアデレードで開催される予定です。
本会議では、“LOCATION AND VELOCITY DETECTION OF EDIBLE WIRELESS CAPSULE SENSOR FOR DIGESTIVE SYSTEM MONITORING”というテーマでポスター発表を行いました。発表の内容は、電磁波を用いてワイヤレス可食センサの位置と速度を計測し、消化器疾患の診断に応用可能なシステムの提案でした。
消化器疾患の原因の一つとして、食物の消化器内での滞留時間の長期化が存在します。この課題を受け、我々の研究室では可食素材のみで構成されたワイヤレスセンサを開発しているが現状のセンサでは位置や移動速度の測定ができておりませんでした。
そこで本研究ではワイヤレス可食センサの位置と速度を測定する検知システムを提案します。センサと電磁波で通信を行う送受信機を固定した状態でセンサを移動させると、センサの位置に応じて反射信号の強度が変化します。この信号強度の変化を活用してセンサの位置との関係を関数化することにより、任意のセンサの位置を特定することができます。さらに、時間と共に計測することでセンサの移動速度も特定できました。我々のシステムで実験を行ったところR2値が0.95、平均二乗偏差が9.5 の数字を得ることができ、高精度なセンサの位置・速度計測が可能であることが示唆されました。
本発表では、経口摂取型センサや消化管モニタリングの研究者と共にディスカッションを行いました。他の研究者から可食素材に関する質問や、センサの安全性に関する疑問を多く受けました。完全にワイヤレスで可食素材のみで構成されているセンサが珍しいので多くの方から関心を寄せてもらえました。
私にとって2回目の国際会議となった本会議は非常に特別なものでした。理由は2つあります。1つ目は今後自身の研究を進める上で必要な知見を得ることができたからです。ポスター・オーラルセッションを通して生体センサの最先端の技術について学ぶことができた上に、様々な研究者から研究に関する指摘や助言をいただくことができました。さらに、バンケットや現地視察での交流を通して他文化の理解や新しい人脈を築くことができました。2つ目の理由は自身の研究と発表能力に自信がついたからです。大変光栄なことに、本会議で私はBest Poster Awardを受賞することができました。この賞は718名いるポスター発表者のうち6名が表彰される賞であり、受賞をうけ私は自身の研究が世界的にも注目されるものであることを認識させられました。今後も研究を進められるよう実験と発表練習に励みたいと考えております。
最後に、本学会の参加にあたり、一般財団法人丸文財団様に多大なるご支援をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。