国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
寺本 匡希
(北海道大学 大学院情報科学院)
会議名
2024 MRS (Material Research Society) Fall meeting & Exhibit
期日
2024年12月1日~6日
開催地
Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, USA

1. 国際会議の概要


学会会場のロゴ写真

毎年11月末から12月初旬にかけてボストンで開催される『MRS Fall Meeting & Exhibit』は、材料研究分野における世界最大級の国際学会である。MRS(Materials Research Society)は、秋季学会に加え、春季学会(Spring Meeting)も毎年開催しており、年間を通じて研究者が最先端の成果を共有し、分野横断的な議論を行う機会を提供している。

今回の学会では、量子材料、エネルギー材料、柔軟電子デバイス、生体適合材料、持続可能性、AIを活用した材料設計など、多岐にわたるトピックが議論された。また、学際的なセッションや企業による技術展示が行われ、研究者同士のネットワーク構築が促進されるとともに、新たな共同研究の展開が期待される。

今回私は、「印刷可能で柔軟性および伸縮性を持つエネルギー自律型センサシステムの材料とプロセスの革新」に関するセッション(EN09: Innovations in Materials and Processes for Printed, Flexible and Stretchable Energy-autonomous Sensing Systems)にて口頭発表を行った。

2. 研究テーマと討論内容

本会議にて、私は「Multimodal flexible sensors for minimally-invasive and real-time plant monitoring」という講演題目で口頭発表を行った。

近年、スマート農業の発展に伴い、植物の状態をデジタル的にモニタリングする需要が高まっている。このような背景から、植物の成長状態と土壌状態を同時にモニタリング可能なセンサシステムを提案した。本システムは、植物の茎の成長率を計測するフレキシブル歪みセンサ、CB(カーボンブラック)電極間のインピーダンスを利用した土壌水分センサ、及びポリアニリンを基盤としたpH感応膜を用いた土壌pHセンサを統合し、取得データから植物の最適な成長条件を抽出することを目的とする。

切り紙構造を適用したフレキシブル歪みセンサは、高い柔軟性と低侵襲性を実現し、植物に負担をかけずに装着できる設計となっている。実験では、このセンサを茎に装着しても植物の成長に悪影響を与えないことを確認した。また、フレキシブル歪みセンサ、土壌水分センサ、及び土壌pHセンサを印刷技術により集積化することで、システム全体の低コスト化を実現するとともに、実証実験を通じて成長環境を包括的に把握できることを示した。

質疑応答では、土壌pH計測時の水分状態がpH計測結果に与える影響について問われた。この点について、湿潤状態や乾燥状態での比較評価が十分に行われていないことを認識しており、今後さらなる検証が必要である。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


シンポジウムの様子

今回の国際会議では、自身が取り組むフレキシブルエレクトロニクス分野において、権威ある研究者の講演を直接聞く機会を得た。分野の最先端をリードする視点やアプローチに触れ、大きな刺激を受けた。また、国内学会と比較して、特定のテーマに深く踏み込んだ研究が数多く発表されており、専門性の高い議論が展開されていた。これを通じて、自身の研究分野における海外の最新動向を把握し、今後の研究の方向性を検討する上で貴重な示唆を得ることができた。

さらに、自身の口頭発表では、質疑応答を通じて自分の研究が国際的な関心を集めるテーマであることを実感し、大きな励みとなった。

本会議への参加に際し、多大なるご支援を賜りました一般財団法人丸文財団の皆様に心より感謝申し上げます。

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