国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
杉浦 雛姫
(上智大学 大学院理工学専攻 電気・電子工学領域)
会議名
12th International Workshop on Nitride Semiconductors (IWN 2024)
期日
2024年11月3日~8日
開催地
Hilton Hawaiian Village, O'ahu, Hawai'i

1. 国際会議の概要


学会会場の外観

International Workshop on Nitride Semiconductors (IWN)は、2年に1度開催される窒化物半導体に関する国際会議です。世界各国の研究者が一堂に会して最新の研究を発表、議論します。第12回目にあたる今回は、ハワイのオアフ島で開催されました。

会場となったヒルトン・ハワイアン・ビレッジは、ホノルル市のワイキキエリアに位置し、目の前に美しい白砂と碧い海のデューク・カハナモク・ビーチ&ラグーンが広がる風光明媚な場所にありました。

ワークショップは、主に全体会議、トピックシンポジウム、ポスターセッション、ランプセッション、産業展示で構成され、「結晶成長」、「物性評価」、「光デバイス」、「電子デバイス」、「ナノ構造」の研究分野に分かれて発表や活発な議論が行われました。

開催期間を通じて、ウェルカムレセプション、ネットワークランチ、女性研究者が集まりディスカッションするランチ、エクスカーションやバンケットなど世界各国の他の研究者と交流し、意見交換できる多くの場も設けられていました。

次回のIWNは2026年10月に熊本での開催が予定されています。

2. 研究テーマと討論内容

「Observation of green to blue region topological edge propagation by GaN membrane topological PhC」の題目で口頭発表を行いました。


発表の様子

研究テーマは「可視域トポロジカルフォトニック結晶を用いたアクティブデバイス応用」です。トポロジカルフォトニック結晶とはバンドトポロジーの異なる2つのフォトニック結晶を隣接させた構造のことであり、その界面にトポロジカルエッジ状態が発現します。トポロジカルエッジ状態では、トポロジカルエッジ伝搬と呼ばれる特異な光の伝搬が起きます。具体的には、特定の波長の光のみが、結晶欠陥や導波路の曲げに対して後方散乱なく伝搬し、伝搬方向が光の偏向方向に依存する特徴をもちます。トポロジカルフォトニック結晶の応用研究は通信波長帯を中心に多数報告されていますが、可視域の光に対応したトポロジカルフォトニック結晶の研究はほとんどありません。本研究は可視域トポロジカルフォトニック結晶の実験的に実証しました。

本研究の成果はHEATE法と呼ばれる窒化ガリウム(GaN)のナノ加工技術を利用して、緑~青色に対応するトポロジカルフォトニック結晶を作製し、トポロジカルエッジ伝搬の観測に成功したことです。過去に同研究室では赤~黄緑色の光が伝搬するトポロジカルフォトニック結晶の作製に成功していますが、緑~青色のトポロジカルフォトニック結晶は構造の微細化により作製が困難でした。そこで本研究は作製技術の最適化を行い、作製した構造のフォトニックバンド測定、および伝搬測定を行いました。その結果、伝搬波長付近でトポロジカルエッジモードを観測し、直線導波路とリング状導波路で緑~青色トポロジカルエッジ伝搬の観測に成功しました。

質疑応答では、海外の研究者からフォトニックバンドの測定手法、およびHEATE法について質問がありました。セッション終了後は、本研究に興味を持ってくださった研究者と質疑応答の続きを行いました。さらに互いの研究テーマについて語り合い、交流を深めました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

IWN 2024は、私にとって初めての国際会議でした。渡航準備はパスポートの取得から始まり、口頭発表準備では慣れない英語と格闘しました。そして、ひとりで異国の地に降り立ち、国際会議に参加して世界中の研究者の発表を聞けたこと、自身も発表できたことは、忘れがたい貴重な経験となりました。

特に、技術的な内容を英語でプレゼンテーションする機会はこれまでなかったため、プレゼンスタイルや言語の壁に不安を感じていましたが、セッション終了後に他の参加者から“良かった”というお声がけをいただけたことがとても嬉しかったです。

国際会議への参加を経て、英語スキルも研究者としての知見も大きく成長することができたと思います。何より自分の研究に自信をもつことができました。今後も積極的に国際会議に参加できるよう研究に励みたいと思います。

最後に、ご支援を賜りました一般財団法人丸文財団に心より感謝いたします。

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