「International Conference on Magnetism 2024」(ICM2024)は、磁性に関する最大規模の国際会議であり、IUPAP(国際純粋・応用物理学連合)が後援しています。この会議は、基礎研究から先進的な応用まで、磁性の全領域をカバーしており、3年ごとに世界中のいろいろな都市で開催されています。最近では、サンフランシスコ(2018年)、バルセロナ(2015年)、釜山(2012年)で開催され、2024年はイタリアのボローニャで開催されました。ICM2024では、主催者は2,000人以上の参加者を予定しており、500人以上の講演者が50のセッションで発表を行います。この会議は、世界中の科学者が一堂に会し、最新の研究成果を共有するための重要なプラットフォームであり、磁性に関する最新の研究と応用について議論するための重要な場となります。
近年、半導体をはじめとする原子レベルでの材料加工技術の発展に伴って、量子材料の実社会への実装がますます重要になってきています。トポロジカル物質の一つであるワイル半金属も、電子の量子力学的ふるまいが本質的な役割を果たす物質であり、数学の位相幾何学(トポロジー)によってその物理的性質が説明できます。ワイル半金属は、高い電気伝導・熱伝導性を持ち、エネルギー損失の少ない電気・熱伝導が可能であることから、省エネルギー素子や磁気センサーなどの産業的応用に最適なワイル半金属の候補物質が盛んに探索されています。
私は、ワイル半金属の中でも特定の結晶構造にのみ実現する、新しいタイプのワイル半金属について調べています。しかし、実験的に見つかっている新しいタイプのワイル半金属は候補物質が少ないことから、その物性を解析するために必要な具体的な物理モデルを構築することが困難です。そこで本会議では、「Investigating the Effects of External Magnetic Fields on Spin-1 Weyl Fermions」というタイトルでポスター発表を行い、そこで結晶対称性に基づいた系統的な物理モデルの構築方法を理論的に提案し、外部磁場に対してエネルギーバンドがどのように変化するのかを明らかにしました。これによって新しいタイプのワイル半金属が外部磁場に対してどのように応答するのかが予測でき、実験による候補物質探索が飛躍的に進展すると考えられます。
今回、初めて国外で行われる国際会議に出席して様々な経験をすることができたことは、今後の研究活動における糧となりました。ポスター発表では、事前に入念に発表準備を行ったこともあり、世界中の研究者と英語で滞りなく議論することができました。議論する中で、自身の研究の重要性や検討すべき課題など新たな視点を得ることができました。一方で、世界中の研究者の口頭発表を聞く中で、自身の研究成果をアピールしてフィードバックを得るという観点では、ポスター発表より口頭発表の方が効果的であるとあらためて実感しました。そのため私は、より大きな研究成果を出して主要な国際会議で口頭発表することを目標にしたいと思いました。
Social dinnerはHotel Savoia Regencyという4つ星ホテルで行われ、立食形式から始まり、後にテーブルについてからコース料理がふるまわれました。ここでは国際学会ならではの雰囲気を感じることができ、多くの研究者と交流しました。しかし、外国語による海外の研究者とのコミュニケーションに限界を感じる場面もあり、自身の語学力向上の必要性を痛感しました。
最後に、本会議に参加するという貴重な機会をいただいた貴財団に深く感謝申し上げます。