国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
佐藤 颯哉
(慶應義塾大学 大学院理工学研究科 総合デザイン工学専攻)
会議名
The 38th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS 2025)
期日
2025年1月19日~23日
開催地
台湾・高雄・Kaohsiung Exhibition Center

1. 国際会議の概要


学会会場の外観

The 38th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS 2025) はIEEE主催のMEMS技術に関する国際会議で、第38回となる今回は2025年1月19日から23日の5日間にわたり、台湾、高雄のAT&T Kaohsiung Exhibition Centerで開催されました。

本会議は新規性を重視するMEMS分野における最も権威のある国際学会のひとつであり、投稿された729件の論文のうち約45%の328件の論文が採択され、内訳は口頭発表が72件、ポスター発表が256件でした。発表内容は、物理センサ、アクチュエータ、光学デバイス、マイクロ流体デバイス、医療用デバイス、RFデバイスなど様々でした。

次回のIEEE MEMS(2026年1月25日~29日)はオーストリアのザルツブルグで開催される予定です。

2. 研究テーマと討論内容

本会議では、“Optical Cantilever using Diffraction Grating and Sampling Moiré Method” というテーマでポスター発表を行いました。


発表の様子

本研究では、干渉パターンとサンプリングモアレ法を用いた高分解能な変位計測が可能なカンチレバーを開発しました。提案するカンチレバーは表面に回折格子を持ち、光が照射されることで干渉パターンが形成されます。カンチレバーが変位すると、このパターンが移動し、その変位量をサンプリングモアレ法によって解析することで、カンチレバーの変位を高精度に測定できます。従来の光学レバー方式では、カンチレバー表面の反射光をフォトダイオードで検出する手法が一般的でしたが、本研究では回折格子を用いることで、光学的な位置調整が容易になることが期待されます。

カンチレバーはガラス基板上に形成され、表面にスリットが配置されています。製作プロセスとして、ガラス基板にクロムおよびアルミニウムを蒸着し、UVレーザによってスリットを形成しました。さらに、カンチレバー形状を切り出し、背面にミラー層としてアルミニウムを蒸着することで干渉パターンの形成を強化しました。作製したカンチレバーは、長さ12 mm、幅5 mm、厚さ100 μmであり、スリットは幅25 μm、高さ4 μmのものを30個配置しました。

計測実験では、カンチレバー先端に荷重を加え、変位に伴う干渉パターンの移動をカメラで記録し、サンプリングモアレ法で解析しました。その結果、理論的な予測と一致する変位増幅効果(約17倍)が得られ、ノイズレベルも1 μm以下であることを確認しました。また、提案手法により、高い分解能での変位計測が可能であることが示唆されました。

発表では、MEMS分野の研究者たちと議論を交わしました。特に、回折格子を用いた光学変位計測の高い分解能と、サンプリングモアレ法を組み合わせた手法の有用性について多くの関心が寄せられました。本研究の成果により、将来的にはより高精度な光学センサの開発につながることが期待されます。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


バンケットの様子

本会議への参加は、私にとって3回目の国際学会であり、これまでの経験を活かして、海外の研究者とより積極的に交流を図ることができました。特にMEMSプロセスに関する議論を深め、多くの知見を得ることができたことは、自身の研究を発展させる上で大きな財産となりました。発表時のディスカッションでは、さまざまな方から貴重な意見をいただき、今後の研究の方向性を見直す上で非常に有意義な機会となりました。また、このような大規模な国際会議で無事に発表を終えられたことは、今後の学会参加に向けてさらなる自信につながりました。他の研究者の発表では、新規性のあるMEMSプロセスに焦点を当てて話を聞き、慣れない英語ながらも積極的に質問や議論を交わすことで、プロシーディングを読むだけでは分からなかった詳細な技術について学ぶことができました。

最後に、本学会の参加にあたり、一般財団法人丸文財団に多大なるご支援をいただきましたことを、心より御礼申し上げます。

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