国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
大塚 知紀
(立命館大学 大学院理工学研究科 電子システム専攻)
会議名
2024 MRS (Material Research Society) Fall meeting & Exhibit
期日
2024年12月1日~6日
開催地
Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, USA

1. 国際会議の概要


学会会場の様子

Materials Research Society (MRS) は1973年に設立された非常に歴史の長い機関であり、毎年春と秋の2度国際学会が開催されています。本学会では半導体をはじめとする各種材料に関する基礎研究から応用研究まで非常に幅広い分野の研究を取り上げており、新しい材料・物理の発展から、電子工学や光工学、医学など新しい分野への応用まであらゆる面での研究をカバーしています。そのため参加する研究者の属性も多種多様で、研究者同士の交流が非常に盛んです。材料科学の領域では世界最大規模の国際学会で、先端性が高いことから世界各国からおよそ5,000人と非常に多くの研究者が集まり、最新成果の発表・検討がなされていることが知られています。

特にポスター発表が特徴的であり、2時間を超える他の学会と比べても非常に長い発表・討論時間がとられ、先端研究の情報交換の場として世界中の研究者が議論します。

私はポスターセッションの中でも極限環境向けの新材料に関して議論するセッション「Advanced Functional Materials for Extreme Conditions」にてポスター発表を行いました。

2. 研究テーマと討論内容


発表中の様子

私は本会議で、「Highly Efficient Water Molecule Heating Technology Based on Semiconductor Multilayer」という題目で発表させていただきました。

赤外線を用いた高効率な水分子の加熱・乾燥は、これらの吸収波長である3µm帯を最適に利用することが重要です。従来使用されている乾燥用の赤外炉はエネルギーの利用効率が低い一因は吸収波長光以外の光エネルギーが乾燥に利用されていないからです。

そこで本会議では半導体超格子の作製技術を応用して、利用されていない光エネルギーを再利用し高効率な水分子加熱を実現する多層膜を報告しました。多層膜はソフトウェアで設計し、比較的化学的・熱的安定性の高い2種類の酸化物半導体を積層することでエネルギー効率の改善が期待できる結果が得られました。さらに薄膜自体の光散乱も非常に少なく、これまでにない化学的・熱的に強固な多層膜が実現できました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ポスター発表中は、薄膜の品質が光学特性に与える影響に関して、多くの方と議論させいていただきました。ポスター発表の特徴を活かし、各分野トップの研究者の方々に教えていただき自身の理解を深めながら議論することができました。多くの示唆をいただき、自身の研究を加速させることにつながったと考えています。またBest Poster Awardにもノミネートいただきました。本研究の重要性を再認識できたうえ、さらなる注目度向上にもつながった発表となりました。

また他の講演では、光の分野に加えて、パワーデバイスなどの持続可能な社会を実現するうえで重要な省エネルギーデバイスに関する最先端の研究に触れることができました。理論と実験を両立した研究は非常にハイレベルであり、自身の今後の研究にも重要な知見をいくつも得られました。

本会議を通して、研究に関する今までにない刺激を受けました。本会議に出席できたことは今後の研究生活や社会生活においても意義があると確信しています。

最後になりますが、本学会の参加にあたり、多大なるご支援を賜りました丸文財団様に心より御礼申し上げます。

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