CLEO Pacific Rim(正式名称: "Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim")は、レーザーや電気光学技術に関する国際的な学術会議であり、この分野における最新の研究成果や技術革新が発表される重要な場です。この会議は、1995年に初めて開催されて以来、30年近くにわたり、デバイスの開発からシステム工学、さらには多様な応用に至るまで、幅広い技術分野の進展をレビューする場を提供しています。特にレーザー技術や光通信、光回路などのテーマは、年々進化を遂げており、参加者は最先端の知識や実験データを共有する機会を得ています。
今回のCLEO Pacific Rim 2024は、韓国・仁川に位置する松島コンベンシアで開催され、1999年と2007年のソウル、2015年の釜山での開催に続く、4度目の韓国開催となりました。松島は、高層ビルや先進的なビジネス施設が並び、スマートシティとしても有名な国際的ビジネス拠点です。仁川国際空港からのアクセスも非常に良く、世界中から多くの学術研究者や業界の専門家が集まり、建設的で活発な議論が行われました。
特に今回の会議では、著名な基調講演者としてデンマーク工科大学のジェスパー・モルク教授が半導体レーザー技術に関する講演を行い、量子コンピュータの分野で知られるデューク大学のキム・ジョンサン教授も講演を行いました。これらの講演を通じて、次世代の光技術や量子技術に関する最先端の知見が共有され、今後の技術革新に向けた議論が大いに盛り上がりました。
さらに、技術セッションやワークショップも多岐にわたり実施され、光通信や量子エレクトロニクス、フォトニクスデバイスなど、最新技術の動向を学ぶ機会が数多く提供されました。これにより、参加者は理論から応用に至る幅広い知識を得ることができ、今後の研究や開発に向けたヒントを得る貴重な場となりました。
今回の会議で発表した研究テーマは「フォトニック結晶導波路チップを用いた真空中での荷電粒子検知」です。私たちの研究室では、シリコンフォトニクス技術を活用した光を使う半導体技術の研究を行っています。この技術を人工衛星に搭載する荷電粒子センサとして応用し、宇宙環境での実用化を目指しています。本発表では、我々が開発したセンサモジュールを真空チャンバーに設置し、電子線、紫外線、Xeプラズマを照射してその反応を確認し、その結果を報告しました。このセンサは、導波路を透過する光が、荷電粒子によって吸収され光強度が減衰するという原理に基づいています。つまり、検知部分に使用するのは光のみであり、他の一般的なセンサとは異なり電子回路を使用しないため、宇宙空間での荷電粒子検知において非常に安全で信頼性の高い技術です。
宇宙空間では多くの荷電粒子が飛び交い、人工衛星が帯電しやすい環境にあります。これにより、静電気放電が発生し、人工衛星に搭載された電子機器が故障するリスクが高まります。しかし、現在のところ、この帯電を正確に計測できるセンサは非常に少なく、その多くは電子機器を使用しているため、帯電自体が電子機器に悪影響を与えるリスクもあります。そのため、我々の研究では、光のみを用いた新しい荷電粒子センサを開発することで、安全かつ高精度な帯電検知を実現し、人工衛星の故障リスクを低減することを目指しています。今後は、この技術の実用化に向けたさらなる研究と開発を進め、宇宙でのセンサ運用の信頼性を高めていく予定です。
光技術の専門家が集まる会議で、私の発表には多くの方々が関心を持って聞きに来てくれました。特に、同様の研究を行っている参加者がいなかったため、非常に興味を持たれ、多くの質問が寄せられました。多くの質問の中でも、「この技術が将来どのように役立つのか」という点に関心が集中し、私たちはこのセンサが小型であるという利点を生かし、小型人工衛星に搭載することを計画していると説明しました。特に、同じ大学のサークルが実際に小型衛星を打ち上げており、彼らと協力して宇宙での実証実験を進めるプランがあることを伝えました。
さらに、本発表で報告した実験の後に行った追加実験についても言及しました。その実験では、センサを単なる荷電粒子検知装置としてだけでなく、宇宙空間とセンサの間の電位差を計測する電位測定センサとしての応用を目指しています。こうした新たな可能性についても、多くの参加者から関心を持っていただきました。
会場の専門家からは、センサのさらなる改良についても有益な提案がありました。具体的には、シリコン以外の材料の使用や、シリコンの導電率を調整すること、またはフォトニック結晶導波路ではなく通常の導波路を使う可能性についての意見をいただきました。
今後も貴財団のサポートを生かし、研究活動に励んでいきます。誠にありがとうございました。