AAS/AIAA Astrodynamics Specialist Conferenceは毎年アメリカで開催される宇宙の運動力学に関連する専門的な国際学会である。今年はコロラド州のブルームフィールドにあるホテルの一つであるOmni Interlocken Resortにて開催された。2024年8月11日 (日) にRegistrationとReceptionがあり、翌日の8月12日 (月)から8月15日 (木) の4日間に口頭発表が行われた。4つのセッションが同時に開催されており、宇宙機の航法・誘導・制御に関する研究発表や、軌道決定・推定に関する研究発表などの深い議論が行われていた。
来年1月には同じ機関が主催している国際学会である35th AAS/AIAA Space Flight Mechanics Meetingがハワイのカウアイ島にて開催される予定である。
本学会にて、私は “High-Precision Formation Flight Navigation and Control System with Optical Laser Sensors” というタイトルにて口頭発表を行った。
近年、高解像度の宇宙観測望遠鏡や地球観測望遠鏡を宇宙機で実現させるためのミッションが活発に議論されている。その中でも特に、複数機の衛星を用いて望遠鏡を構築するという編隊飛行ミッション技術が多く検討され始めてきている。しかしながら、高解像度の望遠鏡を編隊飛行衛星で実現させるためには、宇宙機間の相対位置・姿勢を高精度に維持することが重要である。特に、赤外線干渉計や合成開口望遠鏡などを実現するには宇宙機の相対位置をmmやµmの精度で観測し、制御する必要がある。本研究では、高精度の相対位置・姿勢を観測するための6軸決定手法の提案や相対変位を高精度に観測するためのセンサシステム (四分割センサシステム) の特性分析や数値モデル化、四分割センサシステムを用いた相対位置決定精度の評価、および四分割センサシステムでの航法・制御手法の評価を行った。
今回参加した国際学会は、宇宙機の軌道設計や航法・誘導・制御など学術的に非常に専門的な発表が多くあり、Astrodynamicsと一括りにしても、私が知らないような研究領域が多く研究されているのだと認識する非常に良い機会であった。特に、編隊飛行衛星ミッションの航法・制御に関する研究を主軸としている私にとって、小惑星探査時の軌道決定・推定やシス・ルナ空間の宇宙機運動ダイナミクスに関する研究などを英語で理解するのは非常に困難であった。一方、私の研究に一部かかわるような研究内容の発表も幾つか聞くことができたことは非常に有意義であった。加えて、宇宙機に関する研究の専門分野に関わらず、休憩時間時に多くの方々と交流し、同じ宇宙分野で研究を進めていく同志を多く得られたことは非常に貴重でした。
最後に、本報告書を通じて、国際学会参加のための助成金を支援くださった一般財団法人丸文財団に感謝の意を申し上げる。