40年以上の歴史を持つEuropean Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibitionは、EUで開催される太陽光発電(PV)に関する最大の学会である。この学会では、デバイス材料、コンポーネント、システム、ウエハリング、BIPV、フローティングPVなど、PVに関する幅広いトピックについて議論を行う。また、PV産業の専門家が最新の技術を紹介する展示会も開催されていた。今年はオーストリアのウィーンにて、2024年9月23日~27日の計5日間にわたって開催された。参加者は60か国から計1,800名以上おり、日本からは64名参加していた。
次回は2025年9月22日から9月26日にスペインのビルバオで開催予定である。
私は本会議にて“Understanding Interface States in TiOx/Si Heterostructure by Analysing Temperature Dependence of Effective Carrier Lifetime”という題目で口頭発表を行った。
高効率な結晶シリコン系太陽電池の開発に向けてキャリア選択層は重要である。近年、酸化チタン(TiOx)という材料が電子選択層として注目されている。実際にTiOxを用いた構造で高い性能が出ることは既知であるが、そのメカニズムは解明されていない。このメカニズムを解明することで、太陽電池のさらなる効率向上につながる指針が得られると考えた。そしてこのメカニズムを解明するには、界面状態を正確に把握する必要がある。界面状態を把握する手法としてC-V(容量-電圧)測定が一般的であるがTiOxを用いた構造では、C-V測定が実行不可能だという課題がある。そこで、C-V測定に代わる、実験と電荷の情報を含んだ物理モデリングを併用する界面分析手法を提案した。
結果としては定量的に界面状態を評価することが可能になり、これまであまり知見が無かった、界面準位密度のエネルギー分布に関係する知見を得ることができた。
質疑応答ではモデル式において界面欠陥準位のエネルギー依存性を考慮していないというご指摘をいただいた。本来であれば界面欠陥準位はエネルギーに依存するため、その事実を反映させたモデルを構築することが今後の課題である。
今回はStudents Awardsのファイナリストとして臨んだ発表だったため、かなりの緊張があった。発表自体はうまくいったものの質疑応答にて反省点が残った。質問の意図をうまく汲み取ることができず不十分な説明となってしまったため、今後答えることができるように、英語の勉強も積極的に行っていきたい。また、次回同じような機会があれば賞を受賞できるように発表の質を向上させていきたい。自身の発表以降は他の発表を聞くことに注力することができ、自身と同じTiOxについて研究している学生の方と活発な議論を交わすことができた。
この学会を通じて、今後の研究活動や語学学習へのモチベーションが高まり、貴重な経験だった。
最後にご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団の皆様に心より御礼申し上げます。