Photonics West 2025は、SPIEが主催する光技術に関する世界最大の国際会議である。本会議は2025年1月25日から30日にかけてアメリカ・カリフォルニア州・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催された。
Photonics West 2025は、「バイオメディカルに関する会議 (BiOS)」、「レーザに関する会議 (LASE)」、「光エレクトロニクスに関する会議 (OPTO)」、「量子応用技術に関する会議 (Quantum West)」の4つで構成されており、講演件数は5,000件以上、約24,000人が参加した。「LASE」は19会議で構成されており、なかでも著者は「Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing (LAMOM)XXX」のポスターセッションにて発表を行った。また、会議に併設されるかたちで「Photonics West Exhibition」、「BiOS Expo」、「Quantum West Expo」、「AR|VR|MR Exhibition」の4つの展示会が開かれており、1,500社におよぶ企業が光学に関する技術および最先端の製品を展示していた。
次回Photonics West 2026は2026年1月17日から1月22日に開催予定である。
著者は「Experimental study on blue diode laser induced powder bed fusion of Ti-6Al-4V for improvement of energy efficiency」と題し、ポスター発表を行った。Ti-6Al-4V (Ti64) は比強度と耐食性に優れるが、設計尤度が低い。そこで、本研究では世界に先駆けて青色半導体レーザを用いた粉末床溶融結合法 (L-PBF) を Ti64の造形に適用して積層造形を行った。その結果、空隙率が0.01%の密度の高いTi64積層物が造形でき、従来よりも高いエネルギー効率で造形できることを明らかにした。
発表では造形物内部の空隙について質問を多く受けた。なかでも空隙が発生する要因について、造形物の表面粗度と空隙の測定結果から、粗度の大きい造形面では凹凸が多数形成されており、その凹凸内部に存在する空気が溶融池に取り込まれるため空隙が増大する。したがって滑らかな造形面を形成することで取り込まれる空気を低減し、空隙を抑制できると回答した。また、造形物のさらなる高品質化に対する議論を深めた。
米国で開催された国際会議に初めて参加し、多くの海外の研究者と交流できた。ポスター発表では、これまで意識していなかった用語が原因で会話が途切れそうになる場面が多々あった。しかし、その都度知っている単語を駆使しながら工夫して伝えることで、議論を発展させることができた。一方で、説明がまわりくどくなり、スムーズなやり取りができたとは言い難かった。英語に限らず、専門用語の本質を理解し、相手に明確かつ適切に伝える努力が普段の研究においても重要であると改めて認識した。
他の会議では、レーザのプロファイル制御やアディティブマニュファクチュアリングに関する発表を聴講した。特に、近赤外線ファイバレーザを用いたL-PBFによるTi64の造形の発表では、レーザの出力や掃引速度等の実験パラメータが金属粉末の溶融時の飛散量に与える影響を調査し、粉末の溶融効率(材料収率)を数式化していた。粉末の溶融効率を物理的に示し、これを指標に造形プロセスを開発するという視点は自身にはなかったため、非常に興味深かった。発表後にディスカッションを行い、粉末が飛散する要因やレーザのビーム形状が粉末の溶融に及ぼす影響等について意見を交換した。また、知見が深まると同時に、海外の研究者の研究に対する姿勢や情熱に触れ、自分自身も大いに刺激を受けた。
今後、私は海外で活躍できる人材になるために、英語力の向上や研究活動にこれまで以上に精進しようと考える。
最後に、この度の国際会議の出席にあたり、貴財団よりご援助を賜りましたこと心より御礼申し上げます。