国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
北嶋 昇太
(同志社大学 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻)
会議名
186th Meeting of the Acoustical Society of America (ASA)
期日
2024年5月13日~17日
開催地
Shaw Centre, Ottawa, Ontario, Canada

1. 国際会議の概要


学会会場のShaw Centre

Acoustical Society of America (ASA) は、1929年に設立されたアメリカ物理学協会のアメリカ音響学会が主催する音響に関する国際会議です。音響学とその実用的な応用に関する知識の生成、普及、促進を目的として活動しています。今回はCanadian Acoustical Association (CAA) との共催で、186回目の開催となりました。会場はカナダの首都オタワにあるShaw Centreで、2024年5月13日から17日までの5日間にわたり開催されました。例年通り1,000人以上もの研究者が参加し、音響医学や海洋音響学など10の異なる分野に分かれたセッションが並行して行われました。また、最初の3日間では、様々な音響デバイスの企業ブースが出展されていました。

次回のASA 187回はオンライン上で2024年度中に、対面ではアメリカのルイジアナ州ニューオリンズで2025年の5月19日から23日までで開催される予定です。

2. 研究テーマと討論内容

本会議にて“Ultrasonically induced electrical potentials in PLLA film and bone”というタイトルで発表を行いました。内容は超音波を用いた骨折治療法の改良に関する検討です。

近年、日本をはじめとする先進国では少子高齢化が進んでおり、高齢者の骨折に伴う“寝たきり状態”は予後を悪化させるだけでなく、経済的損失も大きく、重要な課題となっています。高齢者の骨折においては、骨折後速やかに骨癒合を完了させ、リハビリを行うことが非常に重要です。したがって、骨癒合期間を可能な限り短縮できるような骨折治療法の開発が求められています。

これを達成できる1つの候補として低出力超音波パルス治療法(LIPUS)があります。LIPUSとは骨折部位に超音波パルスを照射する骨折治療法であり、骨癒合期間を最大で30%-40%程度短縮可能だと報告されています。さらにLIPUSは被曝もないため、患者の身体的負担も軽く、実際の臨床現場で広く用いられている治療法です。超音波照射によって骨癒合が促進されるメカニズムは未だに未解明な部分が多いですが、有力な仮説として骨の圧電性の関与が指摘されています。これによれば、超音波照射時に骨の圧電性によって生じた電気刺激が骨癒合を促進しています。


オーラルセッションの様子

本研究ではポリ-L乳酸とよばれる圧電高分子材料をLIPUSと組み合わせることで、通常のLIPUS法に比べて骨癒合期間の短縮を実現可能な骨折治療法を開発しています。このポリ-L乳酸は骨よりも圧電性が高いことが知られており、超音波を照射した際の電気刺激についても、骨よりもポリ-L乳酸の方が高いことが予想されます。そこで本報告では、骨にポリ-L乳酸フィルムを接着した場合と骨単体の場合での超音波誘発電位を比較・検討しました。

発表後、多くの方から質問・コメントをいただきました。議論をする中で、自分にはない発想や知見を得ることができ、本骨折治療法の実現に向けて一歩前進することができたと思います。また、議論について常に歓迎の雰囲気があり、自身の研究者として貴重な経験を得られました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

会議では5日間にわたってオーラルセッションとポスターセッションが行われ、私は3日目にオーラルセッションでの発表を行いました。発表後は様々な分野の研究者の方から質問をいただき、大変刺激的な発表となりました。

また、オーラルセッション以外にも学会が開催しているイベントに積極的に参加しました。本学会では学生を対象にしたポスター発表のコンペティションがあり、そちらに参加しました。30名ほどの学生が各々のポスターを持ち寄り、自分の研究を発表し、その内容やプレゼンテーション技術や質疑応答などをジャッジに評価してもらうというイベントでした。当初は英語での発表が初めてだったこともあり、緊張していましたが、皆さんの非常に温かい雰囲気のおかげで活発な意見交流ができ、何人かの方には自身の発表を褒めていただきました。また、今後の国際的なプロジェクトに向けての足掛かりを本学会で築くこともできました。こうした経験は、国際学会に参加しないと得られないものであり、自身の研究者としての成長に欠かせないものだと思います。今後も本学会で得られた知見を基に、学術的成果を出せるように努力を重ねていこうと思います。

最後に、ご支援を賜りました一般財団法人 丸文財団の皆様に心より感謝をいたします。

  
ポスターコンペの様子

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