国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
金 庚民
(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
会議名
25th International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopy (NC-AFM 2024)
期日
2024年8月5日~9日
開催地
McGill University, Montréal, Canada

1. 国際会議の概要


Montréal(学会場付近の様子)

International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopyは1998年の大阪開催を初回とし、毎年アジア・ヨーロッパ・米国のいずれかで開催される、非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を中心とした走査型プローブ顕微鏡を用いた表面科学研究に関連する専門的な国際学会である。今年はカナダのMontréalにある名門大学であるMcGill Universityにて開催された。

初日の2024年8月4日にはsatellite workshopとして、人工知能および機械学習を活かした走査型プローブ顕微鏡の測定手法をテーマとしたセッションが開かれた。翌日の8月5日から9日までの5日間にかけてメインプログラムが始まり、約52件の口頭発表および30件のポスター発表が行われた。中には原子1つ1つを可視化する「原子分解能」を活用した原子・分子レベルでの新物質の創成や、フェムト秒単位で起こる現象をイメージングする手法などをはじめとした興味深い議論が飛び交った。

次回の開催予定としては、日本の物質・材料研究機構(NIMS)が主催を司り、26th International Conference on Non-Contact Atomic Force Microscopyが2025年8月に富山で開催される予定である。

2. 研究テーマと討論内容

本会議において、私は“Examining the CeO2(100) Surface at the Atomic Scale using Atomic Force Microscopy and Force Spectroscopy”というタイトルで口頭発表を行った。


口頭発表の様子

CeO2(酸化セリウム、セリア)は高い触媒活性を有する金属酸化物材料で、格子内の酸素を吸蔵・排出することで材料表面上で様々な酸化還元反応を引き起こす。特に、有害なメタンガスを元に水素燃料を生成したり(CH4+CO2→2H2+2CO)、毒性を有する一酸化炭素を酸化作用で排除する(CO→CO2)反応などを中心とした産業界への応用が期待されている。中でも、CeO2の(100)面は最も表面エネルギーが高く、触媒として優れた特性を有する可能性が高いとされているが、その活性ゆえにCeO2(100)表面は他の(111)などの面方位と比較して複雑な表面構造を示す問題がある。その構造を解明するため、本研究では超高真空環境下で表面・界面を原子レベルで制御したCeO2(100)薄膜を成長し、極低温(4.8 K)環境下で走査型トンネル顕微鏡(STM)と非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)を用いて表面構造を原子レベルで明らかにし、各原子サイト上でフォーススペクトロスコピー測定を行うことで元素種を同定することに成功した。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回のNC-AFM国際会議に参加するのは初めての体験であり、特に総参加者122人の中の日本人学生としては自身が唯一であったため、より積極的に海外の研究者と積極的な交流を図った。本会議はコーヒーブレイクやランチの際に参加者同士で交流できる時間を十分に設けており、おかげで自身の研究で行き詰まっていた部分をちょうど専門的に研究している研究者とも出会い、今後共同研究に発展しうる繋がりも得られた。さらに、ポスドク先としてアプライしたいと考えていたラボの先生方にも直接お会いし、対面でファーストコンタクトを取れたことは表面科学の専門性の高い本会議ならではの収穫であると感じた。今後、自身の研究をさらに発展させるとともに、インパクトの高い論文誌への掲載を志して精進したいと考えている。

最後に、本国際学会参加にあたりご支援いただきました一般財団法人丸文財団に心より御礼申し上げます。

令和6年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ