Photonics West 2025はSPIE (The International Society for Optical Engineering) が主催する光学・フォトニクスに関連する世界最大規模の国際会議であり、今回の参加者数は25,000を超えた。本会議では主にBiOS、LASE、OPTO、Quantum West(バイオフォトニクス、レーザー技術、光エレクトロニクス、量子光学)の分野に分かれ、5,000以上の研究発表が行われ、最新の研究成果が報告された。また、展示会では1,500以上の企業が出展し、大変盛況であった。
私にとって、本国際会議の参加は初めてアジア圏を出る機会となり、世界中の研究者や出展企業の参加者と英語で交流を行う貴重な経験となった。OPTO内の“Quantum Sensing and Nano Electronics and Photonics XXI”というconferenceのポスターセッションにて発表を行った。
次回の本会議Photonics West 2026は2026年1月17日~1月22日に開催予定です。
“Remote fiber sensing by quantum spectroscopy using frequency entangled photons via a real-world fiber network”というタイトルで口頭発表を行った。
従来技術の限界を突破した高機能・高精度な光学実験を可能にするための自由度として、量子もつれ光子の非局所な相関が期待されている。本国際会議では、量子もつれ光の非局所性を活用した量子リモートセンシング技術の開発を目指し、遠隔地に伝送させた光子との周波数相関を活用した遠隔ファイバセンシング実験の報告を行った。周波数相関を持つ量子もつれ光子対の片方を、汎用の通信用光ファイバネットワークを用いて遠隔地に伝送し、温度変化や振動に反応するファイバセンサーと作用させて検出する。もう片方の光子は伝送させず、手元の分光装置で波長情報とともに光子を検出する。遠隔地でファイバセンサーを透過した光子の検出情報をトリガーとして、手元の光子の分光情報を積算することで、遠隔地のファイバセンサーの情報を手元の分光装置で測定することができる。発表では、二光子それぞれのスペクトルを測定することで周波数相関を介してファイバセンサーの分光情報が得られる原理を示し、さらに遠隔ファイバセンサーと作用していない光子のみスペクトル測定をすることで、遠隔分光実験の応用可能性を実証した。ポスター発表では、分野の異なる研究者と英語で議論を交わすことができ、有意義な意見交換の機会となった。
これまで私が参加した国際会議は、日本国内や韓国など、極東地域で開催されたものだけであった。今回参加したPhotonics Westは世界各地から参加者が集まる規模の大きいものであり、様々な刺激を受けた。聴講したconferenceでは、光に関連する多様な研究を触れることができ、とくに量子光学分野について重点的に学ぶことができた。また、技術的な講演だけでなく、論文執筆やPhD取得後のキャリアプランに関するワークショップにも参加し、今後の研究生活に役立つ知見を得ることができた。さらに、企業展示では、実験に使っている光学素子や検出器を製造する企業の方と会話し、研究の周辺分野について理解を深めることができた。自分が取り組んでいる研究が、世界中から注目されている量子技術のひとつであることを強く実感し、研究成果の発表や論文投稿を通じてさらなる貢献をしたいという意欲が高まった。
今回の国際会議への一週間の出張は、私にとって初めてのアメリカ滞在でもあった。特に、一人でホテルのチェックインやスーパーマーケットで食料品などの買いものを行う経験を通じ、英語を用いた海外滞在への自信をつけることができた。一方、治安や物価の違いを肌で感じ、日本の安全さや暮らしやすさを実感する機会にもなった。
今回の国際会議への参加および海外出張を通じて、研究者として、また個人として、大変貴重な経験を得ることができました。多大なるご援助を賜りました貴財団に心より御礼申し上げます。