Asian Symposium on Materials and Processing (ASMP) は、材料および加工工学分野における研究のさらなる発展と協力の強化を目指す国際会議で、アジア圏から集まる参加者が、先進材料や加工技術に関する最新の研究成果や知見を共有し、活発に議論・意見交換を行うための貴重な場を提供しています。
本会議は2006年の創設以来、数年ごとに開催されており今回で7回目を迎えました。本年度は2024年12月5日から7日の3日間、インド チェンナイにあるIITマドラス校で開催されました。IITマドラス校は、1万人以上の学生と700人以上の教員が在籍し、約250ヘクタールの美しい森林に囲まれたキャンパスを持つ、世界的に有名な学術研究機関です。
本会議では29件の基調講演と89件の口頭発表、33件のポスター発表が行われました。
Modeling and analysisのセッションにおいて「Novel Design and Fabrication of Tactile Pin Actuator for Tactile Displays Utilizing Kirigami Structure」の題目で口頭発表を行いました。
近年VR技術が発展し、カメラやディスプレイによる視覚情報、マイクやスピーカーによる聴覚情報など視覚、聴覚においては情報提示技術が確立されています。一方で触覚情報については発展途上であり、より現実感のある触覚情報提示技術の確立が目指されています。そこで、触覚ディスプレイと呼ばれる、皮膚の感覚受容器を刺激することで触覚情報を伝達するデバイスの開発を行っています。
本講演では、形状記憶合金 (SMA) を用いた反力可変形触覚ディスプレイ用アクチュエータを設計・作製し、駆動評価を行いました。本アクチュエータは、駆動部と触知ピンを一体化し、Kirigami構造を採用することで、平面から鉛直方向に押し込み可能な機構を示します。有限要素シミュレーションにより、押込み時SMAの超弾性を提示可能な構造を設計しました。MEMSプロセスにより作製したアクチュエータにおいて、駆動原理である超弾性効果、及び温度と触知ピンからの反力の関係を明らかにしました。
本会議では初めて英語で発表する機会をいただき、緊張感を抱えながら臨みました。国内にいる間から入念にプレゼンテーションの準備と練習を重ねたおかげで、発表自体はスムーズに行えたと感じています。しかし、質疑応答では質問の内容が理解できずに何度も聞き返したり、答えたい内容が英語で思い浮かばなかったりと、英語でのコミュニケーションの難しさを痛感しました。特に、アジア系の英語の発音を聞き取るのに苦労し、国際交流では訛りのある英語にも対応できるリスニング力が求められると実感しました。
学会では、世界遺産ツアーやパーティーが開催され、インドの多様な文化に触れる機会を得ました。また、研究についての意見交換を通じて多くの人と交流できたことは、非常に貴重な経験となりました。現地の学生たちの熱心な研究姿勢に刺激を受け、私自身も卒業までの限られた時間で、より一層研究に力を入れたいと考えています。
最後に、貴重な機会を支えてくださった一般財団法人丸文財団の皆様に、心より感謝申し上げます。