国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
稲葉 賢駿
(日本工業大学 大学院工学研究科 電子情報メディア工学専攻)
会議名
2024 IEEE International Symposium on Circuits and Systems
期日
2024年5月19日~22日
開催地
Resorts World Convention Centre, 8 Sentosa Gateway, Singpore

1. 国際会議の概要

IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS)は、電子回路およびシステムに関する世界最大級の学会です。本年度はシンガポールのリゾート地であるリゾート・ワールド・セントーサ島のリゾート・ワールド・コンベンション・センターにて行われました。また、今回のメインテーマは「circuits and systems for sustainable development(持続可能な開発のための回路とシステム)」となっており、人工知能とディープラーニング、自動車に向けたスマートシステム、食料安全保障と気候変動、超低消費電力回路とシステムなどの様々なテーマが取り上げられました。また、ISCASは今年で75周年の節目を迎え、例年以上に盛大に行われました。

次回はイギリス ロンドンにて、5月25日から5月28日まで行われる予定です。

2. 研究テーマと討論内容

本会議にて、私は“A routing method using chaotic neurodynamics for the transportation networks with the next generation vehicles”という題目で、5月20日にInnovations in Computational Intelligence: Studies on Structures, Detection, & Optimizationのセッションにて、口頭発表を行いました。


口頭発表の様子

交通渋滞は移動時間の増加に伴う生産性の低下や環境への負荷増大といった様々な社会問題を引き起こします。そのため、交通渋滞の解決は急務となっています。これまでに、我々は交通シミュレータを用いて再現された道路網モデルに対して、決定論的カオス性を持つカオスニューラルネットワークを用いた経路制御手法の提案を行いました。評価実験より、決定論的カオスから生まれる揺らぎの効果によって、迂回経路を走行する車両を発生させることで、交通渋滞の緩和に効果的な性能を有することを確認しました。しかし、これまでの実験では、比較的単純な形状の道路網を用いて評価を行っていましたが、実際の道路網は、地理や歴史的な要因により複雑な形状を有しています。このため、今回の発表では、現実的な形状を有する3つの道路網を構築し、提案手法の評価を行いました。実験結果より、提案手法は、既存の経路制御手法に比べ、様々な形状の道路網においても、交通渋滞の緩和に有効であるロバストな性能を有することを確認しました。

本発表における提案手法は、コネクテッドカーと呼ばれる通信機能を有した車両同士が通信を行い、道路の混雑情報や位置情報を共有し、把握することで最適な経路を構築します。本発表で比較した結果は、コネクテッドカーを用いない従来手法と比較を行なっていたため、性能が高くなるのは必然的ではないのか、という意見をいただきました。この意見を受け、今後は提案手法と同じくコネクテッドカーを用いた経路制御手法との比較やコネクテッドカーと普通自動車の割合を変更した際のシミュレーションなどを行い、提案手法の有効性を示すことを考えています。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回の国際会議の参加は、国内の学会発表では得られない経験を積むことができました。発表会場では、世界中の研究者たちが自身の研究内容について発表しており、その一員として自らも発表できたことが非常に幸せでした。しかし、発表では、質問に対して、満足な返答ができず、悔しい思いをする場面もありました。次回の国際会議では、しっかりとした受け答えができるように邁進します。


バンケット会場の様子

特に印象深かったのは、3日目の夕食会で、中国、インド、カナダの研究者と共に食事をしながら、お互いの国の魅力や食文化、研究の話ができたことです。そのとき、言いたいことや聞きたいことが多かったにも関わらず、言葉に詰まることが多く、話題を逃してしまうことが何度もありました。今回の体験は、もっと会話を楽しめるようにするための英語学習への大きなモチベーションになりました。この貴重な体験を糧にして、より一層研究に励みます。

最後となりますが、今回の国際会議への参加にあたり、多大なご支援を賜りました貴財団に、心より感謝申し上げます。

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