Pacific Rim Meeting (PRiME) は、アメリカ(The Electrochemical Society)、日本(The Electrochemical Society of Japan)および韓国(The Korean Electrochemical Society)の3カ国の電気化学会が4年に1度共同で開催する国際会議です。2024年は、10月6日~10月11日にハワイ・ホノルルの Hawaii Convention Center および Hilton Hawaiian Village にて開催されました。PRiMEは電気化学・固体科学分野における世界最大規模の国際会議であり、6日間で約5,000もの発表が行われました。主な開催場所となったHawaiian Convention Centerは、10万平方メートルの広さを有するハワイ最大の会議場で、3階に約50室の会議室があり、分野毎に分かれて連日多くの口頭発表が行われました。7日~9日の18時から行われたポスターセッションでは、1階の大ホールに3日間合計1,500以上のポスターが展示され、活発なディスカッションの場となっておりました。
私は今回「Doping Effects of Metal-Doped Tin Oxide Nanoparticles Used As Carbon-Free ORR Catalysts for Polymer Electrolyte Fuel Cells」という題目でポスター発表を行いました。
タイトルにある「Polymer Electrolyte Fuel Cells(固体高分子形燃料電池)」は、トヨタのMIRAIをはじめとした水素燃料電池自動車(FCV)に搭載されている燃料電池です。排出物が水のみであるという特徴から、環境に優しいデバイスであるとして注目を集めています。近年、バスやトラックなどの大型車両をFCV化する動きが高まっており、より高性能・高耐久なデバイス開発のため様々な研究が行われています。
私は固体高分子形燃料電池の心臓部である「触媒」の高性能・高耐久化を目指し、研究を行ってきました。触媒には従来「炭素」が用いられてきましたが、性能劣化の原因となっておりました。そこで本研究では、炭素を使用しない「カーボンフリー触媒」の開発に取り組みました。炭素の代替材料として「酸化スズ」を使用し、触媒の大幅な耐久性向上を達成しました。また、酸化スズに異元素を添加することによって導電性を付与し、触媒の反応活性向上に取り組みました。
私の研究分野である「固体高分子形燃料電池」に関連したセッションは、本学会のセッションのなかでも特に活気のあるものでした。口頭発表の会場は300人規模の最も大きな部屋で、常に席が埋まっていました。ポスター発表も同様で、私の発表日には多くの参加者がおり、20人以上の研究者と有意義なディスカッションを行うことができました。質問者はアメリカ、ドイツ、韓国など様々な国の方々で、日本人とは異なる英語のアクセントを聞き分けることに苦労しました。しかしながら、対話を重ねていくことで私の研究内容の重要性を理解してもらえたと感じております。
また、学会内で多くの研究者と交流することができました。特に、京都大学と北海道大学の学生および留学生に仲良くしていただき、学会後に共に夕食を食べるなどして親交を深めることができました。今後の共同研究につながる専門的な話し合いができ、非常に良い機会となりました。
最後に、本学会参加にあたりご支援いただきました一般財団法人丸文財団様に心より感謝申し上げます。