Pacific Rim Meeting on Electrochemical and Solid State Science (PRiME 2024) は4年に1度開催される世界で最大規模の電気化学系の国際会議であり、参加者は世界60か国から約5,000人を数えた。
会議は6日間にわたって行なわれ、電池やセンサーをはじめとしてあらゆる電気化学分野のセッションが572設定され、口頭・ポスター発表が朝8時から夜20時まで活発に行なわれていた。Welcome receptionやLuauと呼ばれるBanquetの他、学生や若手研究者の交流を目的としたStudent Mixierなどが多数企画され、研究者同士の交流が行われていた。
私は主に電極触媒のセッションを聴講した。水素社会構築のために必要な水電解による水素生成技術を主として研究発表が行われた。常に多数の参加者が聴講し、活発な質疑応答が行われており、注目度の大きい分野であることを再認識した。
「Selective synthesis of double-layer nanosheets via layered ruthenic acid with a staged structure」というタイトルでポスター発表を行った。
貴金属酸化物ナノシートは、厚みがナノスケール、横サイズがマイクロスケールという高いアスペクト比に由来した高比表面積を有する二次元ナノ材料である。貴金属酸化物の有する導電性や電気化学安定性によって発電・蓄電デバイスの電極材料として注目されている。特にナノシートの組成や結晶構造、シートサイズなどに着目し、材料としての機能開拓が行われてきた。一方で、ナノシート自体の物性を変化させる観点での研究は未開拓な領域である。ナノシートは積層枚数に応じて物性が変化するが、選択的に積層枚数を制御することは現在のナノシートの合成法では難しい。ナノシートは、層状化合物と呼ばれるナノシートが積層した化合物から合成する。層状化合物はナノシート同士の層間に均一に分子やイオンを取り込む性質を有する。これを活かして、かさ高い分子を層間へと導入することでシートを1枚ずつ取り出し、ナノシートが合成されてきた。積層数を制御したナノシートを選択的に合成するには、分子を取り込む反応が起きる層間が特定の周期で規則的に存在する必要がある。本研究では、反応性の異なる層間が交互に存在可能であることが報告された層状ルテニウム酸を出発物質として2層ナノシートの合成に取り組んだ。粉末X線回折によって層状化合物の構造やはく離したナノシートの厚みを評価し、目的通りに2層ナノシートを合成したことを示した。
国際会議は2度目の参加であった。以前参加した国際学会では、英語でのディスカッションに緊張し、質問者の意図を理解した納得のいく回答をすることができず悔しい思いをした。その際に、次に国際会議で発表を行う際には質問者を十分に納得させ、学術的な議論を深めたいと感じた。そのために、所属研究室のポスドクと毎日英語で会話するなど、英語に対する抵抗がなくなるように日々を過ごした。その成果もあってか、今回の発表では質問者と十分に議論を深めることができた。次回同じような機会があれば、Poster awardを受賞できるような発表を行えるように努力したい。
また、学生や若手研究者を対象とした懇親会であるStudent Mixierにも参加した。英語で自らのバックグラウンドや研究内容を話し、海外で活動する同世代の研究者とのネットワークを形成でき、研究へのモチベーションをより向上できた機会となった。
最後に、本会議への参加にあたりご援助を賜りました貴財団に厚く御礼申し上げます。