国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
土居 諒
(九州大学 大学院システム情報科学府)
会議名
The 50th European Conference on Optical Communications (ECOC 2024)
期日
2024年9月22日~26日
開催地
ドイツ, フランクフルト

1. 国際会議の概要

ECOC(European Conference on Optical Communication)は、光通信技術分野で世界最大規模の国際会議であり、毎年欧州を中心に開催されています。1975年に初開催され、光通信分野の最先端技術や研究成果が共有される場として、技術者や研究者、産業界の専門家が集まる重要なイベントです。ECOCは光通信技術の進化とともに成長しており、通信技術における基礎研究から産業応用まで、幅広い分野をカバーする内容となっています。今回参加したECOC 2024は、その50周年記念として特に注目されており、2024年9月22日から26日にかけてドイツのフランクフルトで開催されました。今回の会議では、次世代通信技術である6GやBeyond 5Gの実現に向けた最新の研究発表が多数行われ、光通信技術における革新と未来の展望が議論されました。特に、6Gにおけるテラヘルツ波や超高速データ伝送技術、次世代光ファイバー技術など、次世代通信技術に関する発表が大きな関心を集めました。ECOC 2024は、採択率が32%と非常に競争が激しい会議であり、特に口頭発表の採択は限られているため、選ばれた研究はその分野における重要な進展を示すものと評価されています。会議期間中は、口頭発表、ポスターセッション、ワークショップ、展示会が行われ、研究者同士のネットワーキングや新技術の紹介が積極的に行われました。また、光通信技術の応用分野として、データセンターや衛星通信、量子通信など、産業界での利用を見据えた議論も活発に行われました。

2. 研究テーマと討論内容

私は今回、ECOC 2024において「300-GHz band 125-Gbit/s wireless communication enabled by photomixer on SiC substrate」というテーマで発表を行いました。本研究では、テラヘルツ波通信の分野における重要な課題である伝搬損失と自己発熱の問題に焦点を当て、特に高温動作時におけるデバイス性能の低下を抑えるため、SiC基板の高い熱伝導率を活用しました。具体的には、従来使用されてきたInP基板と比較して7倍もの熱伝導率を持つSiC基板を使用することで、自己発熱を効果的に抑制し、300 GHz帯で世界最高出力の4 mWという出力を達成しました。この成果は、次世代通信である6Gシステムに向けたテラヘルツ波通信技術の大幅な進展を示すものであり、学術的および技術的に大きなインパクトをもたらしました。さらに、本研究では125 Gbit/sの高データレートにおける無線通信実験を行い、0.5 mの距離での無線伝送に成功しました。この実験結果は、6Gを見据えた高速・大容量通信の実現可能性を示すものであり、テラヘルツ波通信における将来のアプリケーションに向けた重要なステップとなるものでした。発表後、多くの研究者や業界の専門家が私の研究に強い関心を示し、フォトミキサの性能やSiC基板のプロセス技術について多くの質問やフィードバックをいただきました。特に、フォトミキサの設計に関する技術的な詳細や、SiC基板を用いた新しいプロセス技術の有効性、そして125 Gbit/sという高データレートを達成した無線通信実験の意義について、活発な議論が行われました。これらの意見交換を通じて、自身の研究に対する新たな視点や改善点を得ることができ、今後の研究活動の方向性を見直す貴重な機会となりました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ECOC 2024における発表を通じ、私は研究成果を国際的に発信する機会を得ただけでなく、多くの研究者や専門家と有意義な交流を図ることができました。本会議は世界中から光通信や無線通信分野の最先端技術を発表する研究者が集う場であり、その中で自分の研究内容に関する多くの質問やフィードバックをいただいたことは、今後の研究活動において大きな財産となりました。特に、私の発表に対しては、テラヘルツ波通信におけるフォトミキサの性能や、SiC基板を活用したプロセス技術、そして125 Gbit/sのデータ伝送に関する実験結果について、活発な議論が行われました。このような議論を通じて、他国の研究者が持つ異なる視点やアプローチを学ぶことができ、私の研究の進展に対する新たなアイデアを得ることができました。特に、フォトミキサの設計やテラヘルツ波通信の応用に関する技術的な知見を共有し、今後の研究課題について具体的なディスカッションを行えたことは、非常に有意義でした。国際会議に参加することで、異なる文化的背景や研究環境を持つ人々と直接交流する機会が増え、視野が広がったことも大きな成果です。研究そのものだけでなく、国際的な研究者とのコミュニケーションスキルや、他者の意見を柔軟に取り入れる姿勢の重要性を改めて認識しました。これにより、今後の研究活動をよりグローバルな視点から進める意識が強まりました。今回の国際会議出席を通じて得た知識や経験、そして人脈は、私の研究をさらに発展させるための重要な基盤となると確信しています。今後も積極的に国際会議に参加し、研究成果を発信しながら、国際的な交流を深めていきたいと考えています。今回の助成により、この貴重な機会を得ることができたことに心から感謝申し上げます。

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