国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和6年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
弟子丸 拓巳
(名古屋大学 大学院工学研究科)
会議名
2024 MRS (Material Research Society) Fall meeting & Exhibit
期日
2024年12月1日~6日
開催地
Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, USA

1. 国際会議の概要

Materials Research Society (MRS) は量子材料やエネルギー材料から持続可能性、最先端のAIの材料開発への展開といった様々な材料における研究が報告される国際会議である。毎年秋学期と春学期に開催されている。今回参加した国際会議では、6日間にわたって10コの分野(Broader Impact (BI)、Characterization (CH)、Electronics, Optics and Photonics (EL)、Energy and Sustainability (EN)、Materials Theory, Computation and Data Science (MT)、Nanomaterials (NM)、Processing, Manufacturing and Synthesis (PM)、Quantum Materials (QT)、Soft Materials and Biomaterials (SB)、Nanomaterials (SF))において活発な議論が行われた。著者はMTで口頭発表を行い、この分野を中心に聴講したが、材料学に最先端のAIを展開する様々な興味深い報告が多数なされていた。多くの企業の製品に触れることができる展示ブースやポスターセッションもあり、軽食を取りながら参加者同士での活発な交流が行われた。

次回のMRS(2025年4月7日~11日)はワシントン州シアトルでの開催が予定されている。


発表セクション

展示スペース前

2. 研究テーマと討論内容

今回は「GAN-Based Realistic 3D Multicrystalline Si structure Generation Using Actual Si Ingot Crystallographic information」と題して口頭発表を行った。

多結晶材料はその複雑さから結晶組織と特性の関係性を解明することがとても困難である。これらの関係性解明の手掛かりを得る手法として有効的であるのが、三次元的な立体モデルに対する解析である。しかし、実材料から三次元モデルを再構築するには膨大な時間とコストを要し、解析できるモデル数自体が少なくなってしまっていることが課題としてある。


口頭発表の様子

そこで、本研究ではこの課題を解決するべく研究室で培ってきた独自の多結晶材料の解析手法と画像生成AIの一つであるGenerative Adversarial Networks (GANs) を組み合わせることで、様々な仮想的な三次元多結晶モデルを生成する手法を構築したことを報告した。本手法により、三次元モデル生成までの過程が高速化され多結晶材料研究が促進されると考えている。今後の展望として、本手法により大量に生成したモデルに対する特性予測や応力解析といった解析を行っていくことで、結晶組織と特性の関係性を解明に繋がる新たな知見を獲得し理想的な組織設計を目指していく。

本発表にはデータサイエンスや機械学習を材料科学に展開した研究を行う各国の研究者の方が聴きに来てくださった。提案手法に大変興味を持っていただき、今後の研究方針や応用方法に関する質問を多くいただいた。異なる材料に対して同様に画像生成AIを活用されている研究者の方々のお話を聴けて大変勉強になった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回の学会は、初の現地参加の国際学会として口頭発表を行い数多くの研究者の方々と議論したほか、データサイエンスや機械学習を材料学分野に展開した研究をされる著名な研究者の講演を直接聞くことができた。自身の今後の研究の課題や留意すべき点についても理解を深めることができる貴重な機会となった。また、ポスターセッションでは同年代の研究者と近い距離でお話することができ、展示ブースでは多くの企業の方々の製品を手に取ってみることができ、大変有意義な時間となった。背景の異なる多くの方々との交流は自身の英語力向上にも繋がったと感じる。

さらに、会議外の時間でもハーバード大学やマサチューセッツ工科大 (MIT) といった近隣大学を訪れ名門大学の雰囲気を直接感じることができ、非常に貴重な経験となった。また、NBAのセルティックスやNHLブルーインズの観戦を通して国際的なスポーツ都市の現地サポーターとの親交を深められたことも一生の思い出になった。ボストンは食事も美味しく、関わる全ての方々が優しい魅力に溢れた暖かい街であった。

最後に、今回の国際学会に参加するにあたり、ご支援いただいた一般財団法人丸文財団様に心から感謝申し上げます。


食事の様子

NBA観戦

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