ECIS 2023は、ヨーロッパコロイド界面科学学会が主催し、毎年開催される主要なコロイド界面科学の国際会議である。本国際会議では、ヨーロッパ諸国のみならず世界中から多くの一線級の研究者が一堂に会して、情報の交換・研究発表を行う。例年の参加者は約500~800名であり、コロイド界面科学に関する幅広い分野の研究が発表され、非常に貴重な情報が得られる。
今年のECIS 2023は、イタリア共和国のナポリ市で開催された。9月3日~9月8日の6日間にわたって開催された本国際会議の参加者は約800名である。13種類のトピックに関する研究発表が行われ、発表件数は口頭発表が約250件およびポスター発表が約370件である。
研究テーマ:
Elucidation of the Trapping Characteristics of Magnetic Disk-Like Particles Flowing in a Cylindrical Pipe (Brownian Dynamics Simulation)
討論内容:
近年、医用工学分野における磁性粒子サスペンションの応用を目的とした研究が活発に行われている。医用工学分野における代表的な応用例として、磁性粒子の表面に薬剤を被覆させた高次機能性磁性粒子を、印加磁場を用いてがん細胞部へと誘導する磁気誘導型drug delivery システムが挙げられる。本研究では、多対の磁極によって非一様磁場が印加された円管内を流れる扁平状磁性粒子分散系を対象に、ブラウン動力学シミュレーションを用いて円管内を流れる扁平状磁性粒子の吸着特性を解明した。シミュレーション結果より、粒子間における磁気的相互作用の強さ、印加磁場の強さおよび流れ場の大きさが円管内を流れる扁平状磁性粒子の吸着特性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。
発表の際には、扁平状粒子の磁化特性や物性値に関する質問、ならびに粒子と周囲流体間における多体流体力学的相互作用の取り扱い方法についての質問をいただいた。
私は、今回の国際会議に参加して1件のポスター発表を行った。約1時間30分にわたるポスター発表において、海外の研究者や日本人研究者など様々な方から研究に関する質問をいただいた。多くの方が、私のペースに合わせて質疑応答に対応してくださり、専門分野に関する深い知見や研究に対する助言および貴重な意見を得ることができた。また、自身の発表時間以外では口頭発表が行われている他のセッションへと参加し、海外で行われている最前線の研究内容について拝見することができた。国際会議への参加は今回が3回目であったが、ポスター発表での質疑応答を通じて自身の英語スキルの未熟さを改めて痛感した。今後も、研究分野に関する専門知識や情報の収集のみならず、自身の英語スキルの向上にも引き続き努めていきたい。
最後に、このような貴重な経験をするにあたり、ご支援をいただいた丸文財団様に心より感謝申し上げます。