この度は米国最大の電気・電子工学技術の集会であるIEEE (The Institute Of Electrical and Electronics Engineers, Inc) の傘下にある生体医工学専門部会 (Engineering in Medicine and Biology Society) の国際学会に参加した。EMBCは当該分野では最大かつ最も権威があり、プロシーディングは世界最大の学術論文データベース・PubMedに掲載される。今回の会議には世界約50か国から約3,000人の研究者が集った、最先端の科学技術開発について世界中の専門家と議論する良い機会である。
ヒトの感情の推定はAIやヒューマン・インターフェースの開発における重要課題であり、音声、表情、脳活動などの生理データを用いた推定技術の開発が進められている。脳波データからの感情推定技術としては、脳内のネットワーク(機能的結合)のパターンを用いたものがいくつか提案されている。しかしながら、従来手法ではチャネル間の相関のみを用いてネットワークが推定されており、計測データが元来保有している空間的情報が全く使われていなかった。今回の大会に機能的結合マップに脳波電極の空間配置情報を畳み込んだfunctional connectivity networks self-product (FCNSP)を提案し、その有効性を検証した。公開されている感情脳波データベース (SEED)に適用し、畳み込みニューラルネットワークによる感情分類を行ったところ、提案手法によって分類精度が有意に向上することを見出した。提案手法は感情推定技術のみならず、脳波を用いた動作意志や発話意図の推定技術にも応用できる可能性がある。
脳活動研究の専門家、心理学の専門家、その他の分野の研究者など多くの人が私の研究に興味を示し、多くの質問を受けた。質問者の国籍も多様であり、英語、日本語、中国語を使って質問者に丁寧に説明し、さらに外に向けて脳活動、脳ネットワーク、感情、認知心理学などについても議論した。
この大規模な国際学会は、非常に貴重な経験だった。多くの人々が私の研究に非常に興味を持っているのを見て、脳活動の研究、心理学の専門家、および他の領域の研究者を含む多くの方々と議論することができてとても嬉しかった。研究を紹介する際に、私たちが感情状態の推定精度において達成したブレークスルーに焦点を当てた。この方法の革新性と潜在的な応用に多くの学者が興味を持ち、皆様との議論の中で私も多くの有益な提案とフィードバックを得た。学術的な収穫に加えて、この会議は異なる文化的背景を持つ優れた研究者との交流の場ともなった。私たちは脳活動、脳のネットワーク、感情、認知心理学などのトピックについて深く議論し視野を広げることができた。交流を通じて、脳-コンピュータインターフェース技術のさまざまな領域への応用についてより包括的な理解を得ることができた。
この学会を振り返ると、非常に興奮し、やる気が湧いてくる。この革新と探求に満ちた分野では、学びが絶え間なく続くことを強く感じる。私は研究を改善し続け、さらに感情認識における脳-コンピュータインターフェース技術の応用潜在性を探求していく。同時に、より多くの志を同じくする研究者たちと協力し、この分野の発展に貢献し、人類により多くの福祉をもたらすことを楽しみにしている。