国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
田中 優成
(九州大学 工学府 応用化学専攻)
会議名
11th International Conference on Materials for Advanced Technologies (ICMAT2023)
期日
2023年6月26日~30日
開催地
シンガポール

1. 国際会議の概要

ICMAT2023は、Materials Research Society of Singapore (MRS)主催の隔年開催の材料研究に関する主要な国際会議である。講演分野は有機無機を問わず、半導体材料、二次元材料、材料物性の理論・シミュレーション、機能性デバイスの製造技術開発など多岐にわたる。50か国2,000名以上の研究者が参加し、関連分野のみならず他分野の研究者とのディスカッションが可能であり、成果発信および研究促進において非常に有意義な国際会議である。

2. 研究テーマと討論内容

硫黄、セレンおよびテルルを組み込んだラダー型ヘテロアセン系有機半導体について、それらの物理化学的特性評価を行った。単結晶構造解析より3種類の分子は、単結晶中で強固なカルコゲン相互作用のネットワークを形成し、緻密に集積していることが明らかとなった。また、量子化学計算の結果から、いずれの分子も電荷輸送に有利とされる二次元的な電子構造を有していることが確認された。3種類の分子の単結晶を活性層とする単結晶OFET素子では、硫黄を導入した分子において最大ホール移動度20.4 cm2 V−1 s−1と極めて高い移動度を達成した。また、テルルに元素置換した分子においても1.3 cm2 V−1 s−1とこれまで報告された含テルル材料の中では最高水準の高いホール移動度を示した。硫黄からセレン、テルルまでのカルコゲンを体系的に取り扱った研究はほとんどなく、本研究で得られた知見がさらに高性能なヘテロアセン系有機半導体材料群の創出への端緒となり得ると期待している。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ポスター発表において、複数のカルコゲンを導入した分子の電荷輸送特性についての議論を行った。ポスター発表だったため、多くの研究者から多様な視点で有意義な議論をすることができた。この経験は今後の研究において大いに活用できる、異分野の研究者と交流することの大切さを実感した。

また、有機半導体デバイス分野の第一線で活躍する研究者の講演を聴講し、当該分野の現状や今後の発展について、より広い視点から自身の研究について捕えることができた。また、本国際会議は多数の材料分野に関するセッションで構成されており、無機半導体材料や計算化学に関する講演も多数聴講した。有機半導体材料の特性や現状を無機半導体材料と比較を通して深く考察し、把握することができたのは大きな収穫であった。

国際学会に参加するのはこれが初の機会であり、不安もあったが結果的に多くの研究者と有意義な議論を行うことができ、この経験を通して研究能力だけでなく英語でのコミュニケーション能力も向上したと実感している。また、幸運にもBest Poster Awardsを受賞することができ、今後の研究活動においてさらなる成果を得られるよう努めていきたい。

最後に、本会議への参加にあたって多大なご支援を受け賜りました丸文財団に心より感謝申し上げます。

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