丸文財団国際交流助成に選出いただき、EuropaCat 2023 (15th European Congress on Catalysis) に参加した。
EuropaCatは2年に1回開催される、触媒分野の国際学会である。今回の開催地はチェコ共和国・プラハであり、現地のプラハコングレスセンターにおいて2023年8月27日から9月1日までの5日間行われた。プラハはチェコ共和国の首都で、中央ヨーロッパ有数の世界都市である。古い町並み・建物が数多く現存しており、毎年海外から多くの観光客が訪れる都市でもあります。学会では世界各国1,500人以上の研究者が一堂に会し、口頭発表や講演、ポスター発表等が行われ、活発な議論が交わされた。また、研究者同士の交流を深めるイベントも連日開催された。
私は、「Dry reforming of methane over Cr-Ni loaded dealuminated Beta zeolite」というテーマでポスター発表を行った。
本研究は、代表的な温室効果ガスであるメタンと二酸化炭素を、水素と一酸化炭素の合成ガスに変換するメタンドライリフォーミング(DRM)反応の実用化に向けた触媒の研究である。DRM反応は、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素を原料に用いる点や、得られる合成ガスがフィッシャー・トロプシュ反応による合成燃料やメタノールの製造に適している点で注目を集めている。DRM反応において高い転化率を得るためには800°C以上の高温条件下が有利であるが、運転時のエネルギー消費が大きく、実用には適さない。Ni系触媒は、600°C程度の低温条件下でも高いDRM活性を示すことに加え、資源が豊富であり、貴金属と比べて安価であるため実用化に向けて有望だと考えられている。しかし、副反応により生成する炭素が触媒劣化や反応管の閉塞・損傷の原因となるため、その解決が求められる。本研究室では、接触分解反応においてゼオライトの欠陥サイトに導入されたCr種が炭素析出を抑制することを確認している。ゼオライトとは、金属元素を中心とし、四面体構造の単位が3次元的に並んだ多孔質な無機化合物である。ゼオライトが有する細孔構造、高表面積、二酸化炭素に対する高い親和性などの特性は、DRM反応において有利に働く。また、ゼオライトは金属分散性に優れており、安定した触媒担体として知られている。本研究では、脱アルミニウム処理した*BEA型ゼオライトBetaに、CrとNiを導入した触媒を合成し、DRM反応において炭素析出の抑制を目指した。触媒を合成し、反応試験によって性能を評価したところ、Niのみを導入した触媒と比べて一酸化炭素の収率はわずかに減少したが、反応試験後の炭素析出量は大幅に抑制することに成功した。今後は、ゼオライトと相互作用するCr種の効果を他の反応にも応用したいと考えている。
初めて国際学会に参加し、今後につながる貴重な経験をすることができた。現地でのポスター発表では、世界中の触媒分野の研究者の方々と議論することができた。研究内容についてアドバイスをいただいたため、今後の研究活動に活かしていきたいと思う。しかし、質疑応答では英語での質問を聞き取ることができなかった部分もあったため、今後英語でのコミュニケーション力を磨いていきたいと考えている。また、様々な分野の最先端の研究についてポスター発表や口頭発表を聴講し、知見を広げることができた。
今回の国際学会の出席にあたり、貴財団よりご支援いただきまして心より御礼を申し上げます。