IEEE NSS MIC RTSDは原子力学、医療撮像、半導体検出器の3つの分野が複合した放射線分野における最大規模の国際会議である。参加人数は2,000人程度であり、毎回100社以上の関連分野のグローバル企業も展示を行うなど最先端研究を行う研究者が世界中から一堂に集まる。
本学会は一年に一度開催されており、次回は2024年10月26日から11月2日にアメリカ、フロリダ州タンパにて開催予定である。
「Scintillation Properties of Ti-doped LiGaO2 for Neutron Detection」というテーマで発表を行った。
中性子は原子力発電、ホウ素中性子捕捉療法、元素分析といった産業、医療、学術分野で幅広く利用されている。従来の中性子検出器には3Heガスを封入した比例計数管が利用されてきた。3Heは天然には存在せず、水素爆弾の原料である3Hを製造する際の副産物であるため、米国の軍縮に伴い供給量が激減している。一方で近年の大型加速器施設の発展によって中性子検出器の需要は世界的に拡大しており、3Heの代替材料として中性子検出用のシンチレータ (中性子シンチレータ) の開発が求められている。代表的な中性子シンチレータとして、Ag添加LiF/ZnSやCe添加Liガラスなどが実用化されているが、前者は不透明材料であり中性子検出効率が制限されてしまう、後者はガンマ線ノイズとの弁別が不可能といった問題点を持つ。本研究では新規の高効率な中性子シンチレータの開発を目的としてTi添加LiGaO2結晶の作製およびシンチレーション特性の評価を行った。先行研究において無添加LiGaO2結晶は発光量が低いものの、ガンマ線弁別能を有することが報告されており、中性子シンチレータとして有望な材料である。そこで発光中心元素としてTiを添加することでLiGaO2の発光量の向上を企図した。作製したTi添加LiGaO2結晶はX線照射下でTi4+の電荷移動遷移に由来する発光を呈した。また中性子の検出にも成功し、Tiの濃度が3%のサンプルの発光量は無添加LiGaO2の約10倍に向上した。
発表には10名ほどの聴講者が訪れ、議論を行った。材料合成および評価計測の両面から多くのご意見ご質問をいただいた。特に材料合成の際に生じる問題点についての議論では今後の改善に役立つ知見を得ることができた。
ポスター発表では英語でのコミュニケーションがうまく取れず何度も聞き返す場面があった。粘り強く話すことで何とか議論ができたが、より詳細な議論を交わすためには、英語力の向上が必須であると感じた。
私の研究は材料の合成および基礎物性の評価であったが、他の発表は応用に関するものも多く、普段とは違う視点での議論もできたので非常に有意義なものとなった。
最後に、本会議への参加にあたってご支援いただいた貴財団に心より感謝申し上げます。